そこから「食べ物の中では何が好き?お肉?お魚?」「一番好きな果物は何だっけ?」と、少しずつ話題をずらしていき、「そういえば、昔パートで働いていたスーパーのりんごおいしかったわね」などと、仕事や趣味の話に切り替えていくのです。
要は、会話を展開しながら「団らん」の雰囲気を演出すること。実は、「食べていない」という訴えには食事の際の「団らん」が足りずに満たされていなかったという気持ちが、背景に隠されていることも多いからです。
家族の中で1人だけ別の場所で食べたり、先に食事を済ませるなどして団らんが足りなかったりすると、後でほかの家族が会話をしながら食べている様子を見て、「一緒に食べたい」という気持ちが、「食べてない」という言葉になって表れることもあります。
このようなケースでは、お茶などを飲みながら会話をしているうちに、「食べていない」という最初の訴えを忘れて、気持ちが落ち着いていくことも多いものです。
軽食、間食をやめさせて
会話で心の空腹を満たす
また、認知症の影響で脳内の満腹中枢がうまく働かずに、食事をしても満腹感や満足感が得られにくく、十分な量を食べたにもかかわらず、少量しか食べていないと感じる場合もあります。
そのため、実際に空腹を感じて「まだ食べていない」と思い込むこともあります。
その場合も、お茶や果物など軽食を出しながら会話をして、団らんの雰囲気を作ることで心が満たされると、満足する場合も多いもの。
軽食や間食の食べ過ぎは、健康上の問題にもつながるため、できるだけコミュニケーションで解決を図ることをおすすめします。
聞き取りが苦手になってきたら
ゆっくり区切って伝える
認知症が進むにつれて大脳の言語中枢の働きが低下すると、話し言葉を聞いて理解することが苦手になっていきます。
認知症の人の耳には、人の言葉が連続してつながって届き、まるでビデオの2倍速以上の早送りのように聞こえると言われています。