「欠品が生じる状況ではない」
新たな製造元との供給契約は?
では、ノーベルファーマはどうだろう。
「アクチノマイシン Dにつきまして、処方量ベースでのご発注のお願いを致しましたが、これは契約の満了に伴う輸入元の変更に伴うものでございます。
現在、新たな製造元との供給契約に向け、複数社と交渉を進めている状況でございます。
なお、本剤につきましては、使用量を勘案した本剤の在庫量は1年分以上の数量を確保しておりますので、現段階で欠品が生じる状況ではないことを申し添えます」
ノーベルファーマは、「必要なのに顧みられない医薬品・医療機器の提供を通して、社会に貢献する」とのミッションを有し、創業当初から、希少疾患を中心に、必要とされているのに大企業が着手しない医薬品・医療機器の開発に取り組んで来たことで知られる。
今回の件でも早々に、横紋筋肉腫の患者(家族)による講演会に参加し、患者家族たちとの交流を図ったという。
企業努力だけでは限界がある
良薬が消えていく状況を食い止めろ
希少がんばかりの小児がんでは、再発神経芽腫と横紋筋肉腫以外のがん種でも、薬剤の供給はいつストップしても不思議はない。まして日本では、2020年の12月に発覚したジェネリック医薬品の品質不正問題を機に、4年以上に渡って薬不足が続いている。抗がん剤でも、メトトレキサートやアルケランなどが昨年、出荷調整の憂き目にあったばかりだ。
実際2025年の現在も、麻酔薬や抗菌薬、風邪薬に解熱剤、咳止め等々、200品目もの薬が供給不足に陥っている。製薬企業の努力だけでは、この状況を打破することができず、医療制度そのものからの改善が必要なのかもしれない。
安価な良薬が市場から消えていき、生命にかかわる薬が入手困難という事態は誰にでも起こり得ることを、忘れてはならない。
(取材・文/医療ジャーナリスト 木原洋美、監修/国立成育医療研究センター 小児がんセンター長/小児がんセンター 長期フォローアップ科 診療部長〈併任〉 松本公一)