「江戸の敵(かたき)を長崎で討つ」ということわざ通り、意外なところで、あるいは筋違いのことで、向こうが恨みを晴らそうとする可能性も十分考えられる。思いがけないところで足をすくわれかねないのだ。

 そういう事態になれば、結局自分が損するだろう。何よりも大変なのは、向こうの反撃から身を守るために多くの時間とエネルギーを費やさなければならなくなり、あなた自身が消耗して疲れ果てることだ。

 また、相手のマウントに我慢がならないからといって、こちらもマウントを取れば、マウント合戦が始まりかねない。

 最近、自分がどれほど充実した生活を送っているかをSNS上でアピールする人が増えており、それに伴いマウント合戦も絶えず繰り広げられている。実際に目撃した方も多いはずだ。あなたは、どんな感想を抱いたか。マウント合戦がいかに不毛かを痛感した方が多いのではないだろうか。

 そうだとすれば、至極まっとうな感覚だと思う。不毛なやり取りに時間とエネルギーを費やすほど愚かなことはない。だから、「人のふり見てわがふり直せ」ということわざに従い、自分がマウントを取りたくなっても、それによってもたらされるデメリットに思いをめぐらし、慎むのが賢明だろう。

脅迫や侮辱のマウントは
何倍にもなって返ってくる

 とくに気をつけなければならないのは、マウントによって相手を脅迫したり、侮辱したりすることである。

 たとえば、虎の威を借るマウントを取って「○○さんが私のバックについているから、お前なんか簡単に飛ばせる。クビにだってできるんだ」と脅すとか、価値否定型のマウントを取って相手の落ち度を列挙し「お前は全然ダメだ。なんでそんなにバカで無能なんだ」と侮辱するとかいうことは決してやってはいけない。

 中世イタリアの思想家、マキアヴェッリは「ある人物が、賢明で思慮に富む人物であることを実証する材料の1つは、たとえ言葉だけであっても他者を脅迫したり侮辱したりしないことである」と述べており、その理由について次のように説明している。