困っているふりをしながら、さりげなく自慢する場合もある。「今度、○○さんが講演に来られるので、そのお世話をするのですが、どんなことを話せばいいのかわからない」と困った風を装いつつ、○○さんという有名人を呼べるだけの組織に所属しているうえ、そのアテンド役をおおせつかるほど自分が信頼されている存在であることをほのめかす。
あるいは、子育て中の女性が「夫は海外出張ばかりで育児を手伝ってくれない。1人ですべてやらなければならず、困っているの」と愚痴をこぼす場合、自分の夫がしょっちゅう海外出張するグローバルエリートであることを誇示したい欲望が透けて見える。
小金が入ってつい漏れ出た自慢は
しっかりと税務署の耳に入る
このように本人は自身の優位性を示したい欲望が露骨に出ないように、卑下したり困ったふりをしたりするのかもしれないが、聞いている人には何を自慢したいのか簡単にわかる。そうなると、やはり敵意や反感を買う。それだけではない。羨望と嫉妬をかき立てることもある。これが一番怖い。うらやましいとか、ねたましいとか思う相手を引きずりおろそうとする人はどこにでもいるからだ。
たとえば、知り合いの開業医が税金に関する愚痴をこぼしながら、さりげなく年収自慢をしたところ、しばらくして税務署から問い合わせがあり、何度も面倒くさいやり取りをした末に税務調査に入られたそうだ。
脱税をしていたわけではないので、おとがめはなかった。だが、カルテや帳簿などを全部調べられ、犯罪者扱いされているようで嫌だったという。第一、そのときに感じた不安は半端ではなかったらしい。
無事終わったものの、年収をひけらかした場に同席していた誰かが税務署に「あそこのクリニックはかなり稼いでいるみたいですよ。ちゃんと税金を申告しているか調べたほうがいいですよ」みたいな告発をしたのではないかと、いまだに疑っているとか。
これは、あくまでも税務調査に入られた開業医の憶測にすぎず、被害妄想的な解釈をしている可能性も否定できない。