ですから、進行を遅らせるためには、認知症は早期発見・治療が望ましいでしょう。精神科や神経内科では、認知症が疑われる患者に対してはMRIやCTによる画像診断を行い、脳梗塞(こうそく)の有無、記憶の中枢である「海馬」を中心に脳が萎縮していないかを見ます。
そして診断の上で重要なのが問診。近年よく使われるのは、会話の様子から認知能力を評価する方法です。
たとえば「今日は何曜日ですか?」の質問に、「何曜日かな?まあ、毎日が日曜日みたいなもんですよ」と、質問に答えず、はぐらかす。これは認知症の1つの特徴です。
もし、あなたの親や家族が認知症と診断されたら、その後の進行を食い止める最も効果的な方法は、生活を変えず、今できることを続けてもらうこと。
高齢になるほど、体も脳も使わないと衰えるのが早いからです。料理や洗濯などの家事、孫のお守り、趣味、友人との交流など、できることは継続してください。それが脳を鍛えることになります。
また、物忘れや失敗に対して怒ったり否定したりせず、笑顔で接して安心させることが大切。本人にしてみれば、人から責められるとプライドが傷つき、腹も立つ。それが、暴れる、叫ぶ、家を飛び出す、といった問題行動につながります。できるだけストレスを与えず、機嫌よく過ごしてもらうことが、結局お互いにとってラクなのです。
老人性うつを
見分けるポイントは?
一方、うつは、ストレスにより脳の神経細胞が傷つき、神経伝達物質「セロトニン」の分泌量が減ることが主因と考えられます。
そもそも、年齢とともにセロトニンは減少していくもの。そのうえ、たとえば配偶者やペットの死、自身の病気などのつらい経験や、引っ越しなどの環境の変化、あるいは経済的な不安などにより大きなストレスがかかると、それが引き金となって「老人性うつ」を発症するケースが多いのです。
うつは、こじらせると最悪の場合は自殺に至るおそれもあり、とても怖い病。ですが高齢者の場合、本人も周りも気づきにくいのが問題です。若い人なら、精神的な落ち込みや、食欲減退、不眠などが続けばうつを疑うでしょう。