ケロリンは薬にしても桶にしても、宣伝からデザインまでパッと見た印象のすべてが人の心にしっかり刺さるような気がします。

銭湯ならではの
人との距離感が好き

 いまはちょっとジムをお休みしているので、サウナは銭湯が中心になっています。銭湯って、人間関係において微妙な距離感を保っている施設なんだって思うんですよね。

『ケロリン百年物語』書影『ケロリン百年物語』(監修・笹山敬輔 文藝春秋)

 私の銭湯仲間に勝手に「フローラ」って呼んでいる20代の子がいるんです。胸に奇麗な花の刺青があるんです。だから花の女神、フローラ。彼女から本名に「花」が入っていることを直接知らされたときは驚きましたね。

 とても人懐っこい子で、よくお菓子を交換しています(笑)。彼女のくわしい連絡先は知らないんですけど、そういう仲を保てるのも銭湯のいいところですよね。

「常連こそ腰低くあれ」というのが、私よりもずっと長く銭湯に通っているお客さんの言葉なんです。お湯が出るカランを譲ったり、ごみが落ちていたら拾ったり。そんな常連のかたの姿を私も見習おうと思っています。

 銭湯はサウナだけではなく、謙虚で素敵な言葉にも出会える場所なんですね。そんな銭湯が好きな自分でよかったです。

壇蜜/1980年秋田県生まれ。東京都出身。昭和女子大卒業後、さまざまな職業を経験し、2010年グラビアアイドルとしてデビュー。以降、テレビや映画などで幅広く活躍する。著書に『壇蜜的人間学』『壇蜜日記』など。