たとえおざなりなものであったとしても、いい加減な介護だったことをあとから立証することなどできないから、いかようにも言えるのだ。
介護に消極的な人ほど
遺産を得ることには積極的
あくまでも私見だが、介護に消極的な人間ほど遺産を得ることには積極的である傾向は否めないと思う。自分のことしか考えない利己的な姿勢は、その人間の性格や生きかたに基づくものだからだ。
先ほどのB子さんの場合も、妹は四十九日納骨の場で遺産のことを口にしてきた。
B子さんは、増えていくばかりの介護関係の領収証の多くを捨てていた。大きな出費としては両親を引き取るための自宅の増築があり、それについては工務店の見積書とともに領収証も残していたが、妹は「でも、姉さんが勝手にしたことでしょ。私には何の相談もなかったんだから」と猛反発した。
増築工事費は、両親の遺産の3割程度かかったので、もしそれを遺産から差し引くことになったら、遺産はかなり減少してしまう。だから、妹は認めようとしなかった。
B子さんは「他にもいろいろ費用がかかったのよ。せめて大口の増築費用くらいは」と言ったが妹は姿勢を曲げない。B子さんは、妹が電話番号を変えてしまい、新しい電話番号を知らされていなかったことを非難したが「あら、私は伝えたわよ」と言い張る。
どちらが本当なのかの立証はできない。妹は「住所は変わっていないのだから手紙をくれたらよかったじゃないの」とも言った。葬儀のことは手紙で伝えたが、介護中はそのようなゆとりはなかった。それに手紙を書いても、妹が手助けに来てくれる気はしなかった。

B子さんは市民法律相談に出向いたが「自宅の増築費用を遺産から差し引くのは難しいですな。増築部分は、今後あなたたちが使うのでしょうから」という弁護士の回答であった。
B子さんはやむなく諦めたものの「親を引き取らなければ、あの増築は必要なかったし、今後も空き部屋同然となって、それでもアップした固定資産税は支払わなくてはならないんです」といまだに不満である。
実際に介護のために使ったとしても、それが介護費用として認められるとは限らない。裁判所は、遺産から差し引くことには慎重だ。家族としての相互扶助の範囲内のことだと捉えているようだ。