相続完全ガイド#11Photo:PIXTA

遺産分割を巡るトラブルの火種になりやすい「親の介護」。介護をしてきた子どもと、しなかった子どもの対立が続出している。しかし、介護で苦労した子どもが多く相続したいという願いはなかなか認められない。どうすれば献身的な子どもに報いることができるのか。特集『「普通の家庭」が一番危ない!相続完全ガイド』(全14回)の#11では、相続専門税理士の橘慶太氏に、介護をめぐる相続トラブルの解決策を指南してもらった。

「週刊ダイヤモンド」2022年4月30日・5月7日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

親の介護した子vs介護しなかった子
遺産相続でトラブルが多発

「認知症の親の介護をしてきたのは私だ。当然、たくさん遺産を相続する権利がある」――。

「親の介護をしてきた子vs介護しなかった子」のトラブルは非常に多いです。特に認知症の親の介護は、肉体的にも精神的にも非常に大変。遺産を多く相続したいと考える気持ちもよく分かります。

 しかし、「親の介護をしてきたのは私だから、私が多く相続する」という主張は、実務上はほとんど認められません!

遺産増Illustration by Saekichi Kojima

 法律上、亡くなった人の介護などを一生懸命に行い、財産の維持・増加に特別な貢献をした相続人は、遺産を多めに相続できる「寄与分」という制度があります。

 寄与分の額は相続人同士の話し合いで決めることが原則ですが、折り合いがつかない場合は調停や家庭裁判所の審判で決まります。

 世の中には、「寄与分が認められれば介護の苦労が報われる」と信じる人が多いのですが、実務上では寄与分は認められないことが非常に多く、もし認められたとしても、思っている額には到底及ばない少額しか認められない結果になることがほとんどです。

 ではどうすればよいのか。方法は大きく二つあります。