「京都三名水」に触れ、コーヒーで一服

第52回でご紹介した鴨川の水源地である貴船まで避暑に出掛けるのもおすすめですが、下鴨神社から鴨川沿いに水の名所を歩いてみましょう。
賀茂川と高野川が合流して鴨川となる三角州「出町デルタ」の付近は、地元の人も観光客も水鳥たちも憩う癒やし所。対岸へ渡れる飛び石が人気で、石と石との間が意外と離れていますので、大人でもちょっとしたスリルが味わえます。石の上に立つと、水の流れがより間近に、川を渡る風も心地よく感じられますのでぜひチャレンジしてみてください。
「京都三名水」をご存じでしょうか。室町時代のそうそうたる茶人に愛された堀川通沿いに石碑が立つ佐女牛井(さめがい)、京都御所の西側にある縣井(あがたい)、そして梨木神社にある染井(そめい)の水を指します。このうち、今でも触れられるのが染井の水です。
出町デルタから南西に1.5kmほど。9月半ばには秋の七草の一つである萩の花がおよそ500株咲きこぼれ、「萩の宮」と称される梨木神社が、京都御苑の東隣にたたずみます。幕府と朝廷の橋渡し役として明治維新に貢献、閣僚を歴任した三條實萬(さねつむ)・實美(さねとみ)父子をおまつりし、創建から140年ほどの京都では比較的新しい神社です。平安初期には、皇族以外で初めて摂政となった藤原良房の娘で、清和天皇の生母である明子の屋敷跡と伝わります。
染井の水は、御祭神に手を合わせる前に心身を清める手水舎に流れています。千年を超えて都人に親しまれてきた名水を、手にすくって口にしてみてください。雑味のない、まろやかな軟水であることが分かります。午前6時から午後6時半まで、手水舎にある蛇口からくむこともできます。授与所には御神水用のペットボトルもありますので、これにくんでお土産にするのもよいかもしれません。
参拝後は、参道西側にある「Coffee Base NASHINOKI」へ。かつての京都御所春興殿を梨木神社に移築、茶室として使用された建物を再生したスペシャルティーコーヒースタンドで、縁側に座り、木々の緑や木漏れ日を眺めながら、染井の御神水を使った香り高いコーヒーが味わえます。おすすめは、おいしいコーヒーの必須条件である「水」の良さがダイレクトに伝わる水出しコーヒー。また、事前予約をすれば、京都の和菓子と珈琲のペアリングを楽しめる「コーヒーコース」なるユニークなプランもありますので、京都の水由来の“口福”を体感してはいかがでしょうか。
