「やることは山積みなのに、あれもこれも考えて動けないまま、時間だけが過ぎていく」――そんな自分にもどかしさを感じ、ストレスを抱えていませんか?
勉強、仕事、筋トレ…やる気はあるのに先延ばししてしまう。多くの人が抱えるこの悩みに、心理学の視点から答えるのが、新刊『すぐやる人の頭の中──心理学で先延ばしをなくす』です。著者は、モチベーションの研究を専門とする筑波大学人間系教授・外山美樹氏。この記事では、同書の担当編集者が、本書の内容をもとに、忙しい人のための「頭の切り替えのコツ」を紹介します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

【朝イチの習慣】頭の切り替えが上手い人・下手な人の決定的な違いPhoto: Adobe Stock

頭の切り替えが上手な人と下手な人の決定的な差

「やることが多すぎて、気づいたら1日が終わっていた……」

 忙しいビジネスパーソンにとって、こんな後悔は日常茶飯事ですよね。

 メールの返信、会議の準備、資料作成、上司への報告。

 あれもやらなきゃ、これもやらなきゃと目の前の仕事に集中できないまま、時間だけが過ぎていく。

 この「頭の切り替えがうまくいかない状態」を抜け出すカギとして、新刊『すぐやる人の頭の中』で紹介しているのが、「実行意図」という心理的テクニックです。

頭の切り替えが上手な人は、ただ「やる」とは決めない

 何かの目標に向かって行動を起こすとき、人には「目標意図」と「実行意図」の2つの意図が働いていると考えられています。

 目標意図とは、「仕事を終わらせる」といったように、自分が達成したいことを明確にするものです。

 これは、望ましい最終状態を定めるだけで、具体的な行動の計画にはなりません。

 一方の実行意図は、目標を達成するために「いつ」「どこで」「どのように」行動するかを、あらかじめ決めておくものです。

 たとえば、「資料を仕上げなきゃ」というのは目標意図ですが、これだけでは行動に移せるかどうかは気分次第。

 仕事の合間にスマホを開いたり、急な業務が割り込んできたりすると、すぐに目標は意識の外に追いやられてしまいます。

 そこで活用したいのが「実行意図」です。これは、「もし○○したら、△△をする」といったif-then形式で行動をあらかじめ決めておく方法です。

 たとえば、

「朝の会議が終わったら、資料作成に集中する」

「17時から自分の席で修正作業に取りかかる」

 といった具合に、「いつ」「どこで」「何をするか」を先に決めておくのです。

実行意図で「思考の渋滞」をなくす

「あれもやらなきゃ、これも急ぎだ」と考えているうちに、時間だけが過ぎていく……。

 こうした思考の渋滞が起こる原因の一つは、タスクに優先順位をつけられないことです。

 実行意図を使えば、「このタイミングではこのタスク」とあらかじめ決めておけるため、頭を素早く切り替えられるようになります。

 著者の外山氏によれば、実行意図を立てることで、脳が「条件」と「行動」をリンクさせ、次にとるべき行動を自動的に引き出しやすくなるのだといいます。

 たとえば、「昼食後の30分はメール返信」と決めておけば、食後のタイミングで自然と「じゃあ、メールに取りかかろう」と行動が引き出される。

 このように、あれこれ考えて迷う時間が減ることで、集中力も持続しやすくなります。