そこで「誠意」という言葉を使うのです。誠意を見せろという文言だけでは、恐喝罪などに問われることはまずありません。

 カスハラ対応している側からすれば、「誠意を見せろ」だけでも十分に不愉快ですし、怖いと思うこともあります。しかし、気持ち的な問題と法的な問題は別です。怖いと感じたからといってすぐに恐喝罪が成立することはありません。

 加害者側はこの言葉によって、発言の真意は何か、どうすれば満足するか、引き下がるかを暗に示すことができます。そこが都合が良いのです。

 もう1つの思考停止も、1つ目の都合が良いと同じとも言えます。

 これはカスハラ加害者側が、実際のところ何をしてほしいのか、どうすれば良いのかわからないので、とりあえず「誠意を見せろ」と言っておけば、後はこちら側がなんとかしてくれるだろうと思っている時に使います。

辛抱強く待つのが
最善手となるケースも

 どちらの場合であっても、この言葉を言われた時にすることは、具体的に何をすれば誠意となるのかを相手に言ってもらうことです。それが先決です。

 前者の場合、言いたいけれど言えないことなので、のらりくらりと言葉を変えてきます。しかし、こちらの対応は誠意が何であるかを突き止めるまでは他の対応はしません。後者の場合、手立てを考えていないので先に進めずに止まってしまいます。

 加害者側から誠意が何であるか具体的なものが出てきたら、初めて次のステップに進めます。その具体的なものについて、対応できるのか、できないかを判断して、行えばいいのです。

 クレームにはすばやい対応が求められる、と思ってしまいますが、今回のようなケースの時は、辛抱強く待つことが最善手となることもあるのです。