安藤俊介
日本は世界的に見ても過剰ともいえるサービスを低料金で提供することが知られています。お客様、利用者様、ユーザー様、患者様、受講者様等々、サービスを受ける側に「様」をつけることが当たり前のように行われていて、その根底には「お客様は神様」というとてもゆがんだ価値観が隠れていると言えます。

お願い事をされたとき、断るわけではないけど、露骨に嫌な顔をする。話しかければにらむような鋭い視線を向ける。誰に聞かせるわけでもなく大きな舌打ちをする。セカセカ動きながらモノを乱暴に扱ってみる。こうした不機嫌アピールをする人は、一体何がしたいのでしょうか。またこういう人が職場にいたら、周りの人はどう扱えば良いのでしょうか。

最近、若い人が「論破する人」に憧れていることに非常に大きな違和感を持っています。論破できる人が議論に強い人だと大きな勘違いをしている節が見えるからです。論破する人とは議論に強い人ではなく、どちらかと言えば議論に弱い人、もしくは議論のできない人です。

世の中には怒るのが上手な人とそうでない人がいます。その差は一体どこにあるのでしょうか。その差を分けているのがたった一つのポイントなのです。その一つのポイントが押さえられていれば怒ることが上手になれます。

こんなにも怒りにまみれたオリンピックになるのは、歴史上珍しいのではないでしょうか。「コロナ禍の中で緊急事態宣言が出ているのに開催するのか」と人が怒り、開催するとなったら「開会式の演出チームの選定が不適切だ」と怒る。また、バッハ会長の宿泊代、開会式の挨拶の長さに怒ったかと思えば、手のひらを返したようにオリンピックを称賛するメディアの姿勢に怒り、アスリートの発言や態度が気に食わないとも怒る。

「仕事はできるのだけど、部下への当たりがきついのでアンガーマネジメントでどうにかしてほしい」こんなご依頼をいただくことがよくあります。中には「優秀だけど、パワハラをしてしまうのでアンガーマネジメントでどうにかしてほしい」とご依頼をいただくこともあります。こうした依頼をいただく度に非常に強い違和感を覚えていました。今、こうした大きな組織に何が起きているのでしょうか。

新年度を迎え、新入社員や異動で新しい部下と働く機会が増える時期です。昨今、パワハラを恐れて新入社員や部下を叱れない上司が増えている一方で、褒めて伸ばす教育を受けてきた若い世代は叱られ慣れていません。どのように叱れば、パワハラにならず若い世代に伝えられるのでしょうか。日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介氏に寄稿してもらいました。
