1回目の配達完了後、対面ではなくウーバーのアプリを通じて、800円前後のチップをいただいた。2回目の配達のときにチップのお礼を伝え、その際にお届けした料理(中華屋の麻婆豆腐)が美味しいという話で盛り上がった。そして3回目の配達のとき、その女性から「私と友達になってください」「LINEを交換してくれませんか」と提案を受けた。

 こうして貧乏人のウーバー配達員(国民年金は未納。健康保険には未加入。住民税未納で差し押さえ。住民税約20万円の支払い猶予。国の社会福祉課から緊急小口資金として20万円の借り入れ。父親から30万円の借り入れ。奨学金の残債約400万円)と、お金持ちの億ション姉さんとの不思議な交流がスタートする。

 お互い対極の世界に住んでいるせいか、話の内容や価値観がまったく噛み合わない。しかし、これが逆に面白かった。

 高級マンションに招かれ海鮮丼ランチをご馳走になった日、机に置かれたフォークの値段が、なんと一本6000円もすることが判明。思わず「このフォーク、自分の日給と同じなんですね」と伝えたところ、億ション姉さんは「あの、なんかすみません」と謝っていた(ちなみにサラダが盛り付けられていた食器は3万円だった)。

「あんまり使ってないから」という理由で、ネスプレッソのコーヒーマシンを譲り受けたのだが、コーヒー1杯を抽出するのに120円のカプセルを1つ消費する。自分には贅沢すぎると思い、冷蔵庫に入れて2日にわけて飲んでいると報告を入れたとき、億ション姉さんは「香りや風味が落ちるじゃないですか!?」と絶句していた。

億ション姉さんの「おもてなし」
本当の目的とは?

 ベンツの助手席に乗り、三ノ宮駅前にある老舗レストランで、神戸牛ランチをご馳走になったこともある(ちなみにベンツとは別にもう1台、億ション姉さんは高級車を保有していた)。黒毛和牛のすき焼きや、リッツカールトンのホールケーキなど、億ション姉さんには美味しい食事をたくさんご馳走してもらった。