日本には「罪を憎んで人を憎まず」ということわざがある。バブル崩壊が長引いたことの検証を行うと、特定の省庁や個人を非難することになる。それを恐れているのかもしれない(ちなみに、本格的な「検証」が国会の決定を経て行われた唯一の例として東日本大震災における福島第一原発のケースがある)。

「おかしい」と言えない
横並びの日本の労働環境

 2001(平成13)年に行政改革が行われた。「橋本行革」である。その後の小泉内閣では行政改革の成果をうまく活用し、いくつかの改革を進めた。その結果として、先に示したように日本の競争力ランキングは上昇した。しかし近年は、そうした行革精神と逆行するようなことが起きてきた。

 日本を強くするためには、行革が不可欠である。「橋本行革」で基本的な考え方が出されている。その後、公務員制度改革は失敗し、改革の司令塔である経済財政諮問会議の機能は低下した。そう私は認識している。そこを変えれば、日本経済は復活する。今、日本にささやかな追い風が吹いているからである。

 日本の制度に欠陥があることに、多くの人は気づいている。例えば、日本は「横並び」志向で良くないという。良くないことは何となくわかる。では、どうして横並びなのだろうか。基本的には競争が制限されているからだ。

 どうして会社内で暗い顔をしているのか。職場を移ることが、容易にできないからだ。だから労働市場改革は重要になってくる。職場を替える覚悟があれば、上司に対して堂々と「それはおかしい」と言える。

 それが言えないのは、この会社で骨を埋めなくてはならないと思ってしまうからである。横並び意識を変え、簡単に職場を替えることができるようにすること、それが政策の役割である。

 日本では「金銭解雇」の話をすると「金で首を切るのか」「金での首切りが横行する」というような反応が返ってくる。

 2024(令和6)年秋の自民党総裁選挙で、小泉進次郎氏や河野太郎氏が言っていたように、「金銭解雇」のルールをつくる必要がある。雇用主と労働者がもめた場合には、最終的には所得補償、つまりお金で解決するしかない。何事も、もめ事が起きれば最後にはお金で解決するしかない。それと同じことである。