簡単ですよ、相手の利益を考えること。どうやって相手に儲けさせるかを考えれば、自分の利益にもつながる。自分の儲けしか考えないと、うまくいかない。チームワークは連携が大事。

 さっきの僕の話で言えば、僕がOKしない企画や商品は世に出させないようにした。メーカーは、最初は面倒だったかもしれないけど、僕が責任を持って見ることでジャンプに商品の情報を出せる。

 そうすると、商品は売れるんですよ。僕にはコントロールのメリットがあるし、読者にも情報を届けられる。メーカーも宣伝費を使わなくて済む。これが相互協力、相互利益です。

――そこまでうまくやるには、どうしたらいいのでしょうか。

 最初はみんな僕のことを「うるさい、厳しい、面倒くさい」と言いますけど、一度仕事すると僕から離れられなくなる。僕を通すことで成果が得られるからです。

 僕は、目の前の人に興味を持って、面白いと思ったら関わります。その人のいいところを引き出したいと思う。だから誰とでも仕事をするわけではなく、付き合う人は選んでいます。

 そうすると人脈マップができて、「この人とはこういうことをやりたい」「あの人と組ませたら何か生まれるかも」と考えられるようになる。そういうのも仕事の仕組み化です。

 こういう環境を整えれば、優秀な人がついてきて、勝手に仕事をつくってやっていきますよ。僕は、他の人の3~4倍の成果を出していて、使っている時間はむしろ半分です。

――そんなふうに言い切れる鳥嶋さんに、ついていきたい人は多いですよね。それを取捨選択するのは心が痛みませんか?

 全く痛まない。仕事ができるかどうか、それだけです。相手を認めて一緒に仕事するというのは、そういうこと。それを理解してちゃんとやれば、リターンは返ってきます。

「鳥山明ですら捨てる」
自分に仕事を引き寄せろ

――他のインタビューで、「もし、もっといい才能が見つかったら、鳥山明ですら捨てる。それが編集者の醍醐味であり残酷なところだ」と答えていましたね。あまりに非情ではないですか?

書影「ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術」「ボツ 『少年ジャンプ』伝説の編集長の“嫌われる”仕事術」(鳥嶋和彦、小学館集英社プロダクション)

 仕方ない。それが、この仕事なんです。逆に言えば、いつでも手離せるようにしておくことが編集者の責任でもある。僕がいなくなっても、作家がひとりで考え作品をつくり続けられるように、担当している間は全力で寄り添い、全力で向き合い、最高の作品を描かせる。

 だから出会ったときには、どう別れるかをもう考えておかないといけない。永遠には続かない。お友達でも恋愛関係でもないから。仕事ですから。

 最後にひとつだけアドバイス。仕事に自分を合わせるんじゃなくて、自分に仕事を引き寄せてください。

 仕事をするのも、それに対して何かを感じるのも自分。自分からは逃げられない。だから自分が感じたことを大事にしないと、どんどん苦しくなっていきますよ。

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