「好きな仕事ができない。さっさと会社を辞めるべき?」→伝説のジャンプ編集長のアドバイスが、ぐうの音も出ない正論だった!

『週刊少年ジャンプ』第6代編集長を務めた鳥嶋和彦さんは、実は入社するまで漫画をほとんど読んだことがなく、ジャンプの存在すら知らなかったという。そんな人物が、どうやって漫画家・鳥山明さんの才能を見つけ『ドラゴンボール』を生み出したのか。その後も『ドラゴンクエスト』『ONE PIECE』『NARUTO-ナルト-』など数々のメガヒット作品に関わり続けたのはなぜか。「やりたいことがない」「職場が合わない」と悩む全ての人に向けて、仕事との向き合い方を語る。(ライター 池田鉄平、ダイヤモンド・ライフ編集部)

配属初日で辞めたいと思った僕が
ジャンプで23年も働いたワケ

――「仕事にやりがいが持てない」「好きなことができないから会社を辞めたい」と思う人は少なくありません。鳥嶋さんも『週刊少年ジャンプ』編集部に配属された当初は、失敗したように感じていたそうですね。

 そう、最初は全くなじめなかった。編集部の空気も合わないし、そもそも漫画をほとんど読んだことがなくて面白さが分からなかった。少年ジャンプという雑誌の存在すら知らなかった。世間ではよく、「3日・3カ月・3年で辞める人が多い」なんて言うよね。僕は3日どころか、初日で辞めたいと思っていた(笑)

――そこから、なぜ23年間(新卒配属~『Vジャンプ』創刊で編集部を出るまでの17年間と、部数急落で編集長として呼び戻された6年弱の合計)もジャンプで働くことに?

 辞めなかったのは、「漫画家が好き」だったから。新人の持ち込み作品を見たり、平松伸二さんの『ドーベルマン刑事』を担当したりする中で、寝る間も惜しんでペンを握り続ける彼らの姿に心を打たれたんです。「こんなにひたむきに仕事に向き合う人たちがいるんだ」と。

 それとある日、編集部を見学に来た高校生が、好きなキャラが登場する原稿を見て、目を輝かせてものすごく喜んでいた。その反応を見て「漫画って、こんなに人の心を動かすんだな」と気づかされました。

 それでふと、「全部読んでみよう」と資料室に駆け込んで、いろんな漫画に手を伸ばしたんですよ。すると少女漫画、萩尾望都さんや竹宮惠子さんの作品がめちゃくちゃ面白かった。

 そこから「漫画って、読みやすい漫画と読みにくい漫画があるな」と思って、例えばちばてつやさんの『おれは鉄兵』はすごく読みやすいけど、なんでだろう?と疑問が生まれた。そこで第1話を50回読んで、コマ割りやセリフの配置を研究したんです。