
『週刊少年ジャンプ』第6代編集長、「Dr.マシリト」こと鳥嶋和彦さんは、漫画家・鳥山明さんの才能を見つけ育てた伝説の編集者だ。担当した『ドラゴンボール』やゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズの他にも、『ONE PIECE』『NARUTO-ナルト-』など数々のメガヒット作品に関ってきた。ものすごい仕事量をこなしてきた鳥嶋さんだが、意外にも、「楽することばかり考えてきた」という。最小の労力で最大の成果を出すには、どうしたらいいのか。考え方と実践法を教えてもらった。(ライター 池田鉄平、ダイヤモンド・ライフ編集部)
「面倒くさい」「どうすれば楽になるか」が
仕事を早く終わらせる動機になる
――鳥嶋さんが思う、若いビジネスパーソンが最初に身につけるべき力とは?
「他者への興味を持つ力」ですね。編集者にとって最も大切な資質は、作家の才能に惚れ込む努力ができるかどうか。これは編集の仕事に限らず、あらゆる職種に通じると思います。
――一般的な営業職や事務職でも通用する考え方でしょうか?
もちろん。それと僕は、昔から単調な作業も好きで、学生時代の皿洗いのバイトも苦にならなかった。「どうすればもっと早く、きれいに洗えるか」を常に考えていた。すると、単純作業の中にも工夫や改善の余地が見えてくる。
漫画でも昔はネームをトレースして原稿を整える作業があって、面倒で地味な仕事なので、「どうすれば楽になるか」と考えた。漫画家への原稿の指示を工夫する、つまり適切なガイドを渡せば、測らずに済むしトレーシングペーパー作業も減らせると気付いた。スプレーのりとカッターナイフで済ませられれば、作業効率は劇的に変わると分かった。
――それって、面倒なことを最初に「仕組み化」してラクにする発想ですね。
まさにそう。「なぜ手間がかかるのか」「どうすればもっとシンプルにできるか」を問い続ける。
2時間かかる作業を、自分は30分で終わらせたい。そう思えば、自然と新しいアイデアが浮かぶし、道具も探したくなる。文房具屋に行って便利なものを探したり、デザイナーに相談してみたり。そんな風に、自分で仕組みを整えていく姿勢が、仕事を面白くする鍵だと思いますよ。
僕の中にある成功のターゲットは、「楽して、他の人より早く、しかもきれいに仕上げる」こと。そして空いた時間で、別のことをやる。この発想がずっとベースにあります。
――でもその考え方を実践するには、個人の努力だけでなくチームで協力しないと成立しない場合もありますね?