「幸せってふたりでなるもんやね」初キスの夜の後、くらが「ほいたらね」で旅立つ→笑顔のお別れも良いもんだ【浅田美代子コメント付き・あんぱん第90回】

女性陣が各々語る
「女の本懐」

 くらがのぶのように気の強い女がそばにいたら「柳井嵩はきっとひとかどの人物になるがやき」と太鼓判を押す。すると登美子が嵩はのぶがいなかったら役立たずみたいだと反論。

 羽多子が「しっかりした女に支えられてひとかどの男になるがです」とくらを援護した。実際、くらはそうだった。彼女がいたから釜次は好きにおもしろがって生きられたのだ。

 ちょっと違う意見なのは千代子。「わたしは支えるというより寛さんにうんとほれちょりましたき」とのろける。羽多子は「わても」と同調。どっちなんだ。

「豪ちゃんに一生分の恋をした。それはうちの心の支えやき」と蘭子が言うと「あなたの気持ちわかるわ」と登美子が彼女を抱きしめた。

 お父さんが死んでから2回も結婚しているじゃないかと嵩は呆れるが、「一生分愛したのは嵩の父さんだけよ」と登美子。それが嵩はちょっとうれしい。

 改めて言うまでもなく、釜次、結太郎、寛、清とみんなイケメンである。女性はいかした男性のためだったら惚れて惚れて尽くし抜く。それが女の本懐という世界。

 メイコは「うちも一生分の恋がしたい」と酔いが回って『星の流れに』を歌いだす。「こんな女に誰がした」という荒んだ女性の歌である。どういう選曲。案の定、お祝いで歌う曲じゃないと羽多子が咎める。

 いかした男にすべてを賭けて不幸になっても構わない、それが女の生きる道、なのか。こんな女性たちに囲まれて、嵩の心情はいかに。

 くらは嵩に「のぶより長生きしてね」と謎の祈り(呪い?)をかける。

「のぶちゃんは長生きしそうですね」と嵩は言うが……。史実を見ると……(以下自粛)。

 トイレにいった千代が天井に穴があいていたと慌てて戻ってきた。たぶん、朝田家全員がそれを体験してきたはず。天井の穴くらい長屋の誰かが塞いだりしないのかなと思うが、やなせたかしの史実でもトイレに穴が開いていたというので、当時の貧乏暮らしとはそういうものだったと理解するしかない。終戦から2年、まだまだ生きることに精一杯で天井の穴なんて二の次なのだろう。

 こんな貧乏な家と登美子に言われ、「私は幸せですき」とのぶはしんみり語る。