照明の設計にも気合を感じる
すてきなファーストキスシーン
お客様を居間に残し、のぶと嵩は天井に穴の開いた場所(洗面所?)に並んで座り、静かに語り合う。共同の場所だからか、ふたりのトーンはとても静か。
これから頑張るという嵩にのぶは
「そんなにがんばらんでえいきね」と言うが、嵩は「がんばりたいんだ。のぶちゃんのために」。
きれいな星空を見上げてのぶは言う。
のぶ「うち こじゃんと幸せ。嵩とおるだけで。でもいまが一番幸せやったらいややな」
嵩「僕がもっと幸せにする」
のぶ「幸せって誰かにしてもらうもんやのうてふたりでなるもんやないろうか」
のぶ「ふたりで探していこう。何が起きてもひっくり返らんもの」
嵩「そうだね ふたりならきっと見つかる」
「うち嵩と会えてほんまによかった」と言うのぶを嵩は抱きしめる。
はじめてのキスのあと照れるふたりの表情がいい。後ろの窓の奥が透けて見える照明の設計にも気合が入っている。木も風でかすかに揺らしている。
史実では、暢が「晴れた夜には星がきれいよ。私、こんな暮らしがしてみたかったの」と言っておもしろがった、と『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』(梯久美子著)にはある。
トタン屋根が破け、そこから見える星空で天井がすてきに見えた。
翌朝、朝田家が帰っていく。登美子も千代もいないのは、登美子の目白のおうちにいったのだろうか。
「夫婦になったのぶと嵩を見届け、くらは釜次のもとへ旅立ちました」
御免与町への帰途はくらの死出の旅と重なる。
釜次についでくらも「ほいたらね」。どんどん、嵩とのぶの思い出の世界へ旅立っていく。
亡くなる前に東京に来て銀座で長谷川一夫を見られて良かった。
