古い働き方でいれば、
詐取されるだけになる
自由に、楽しい環境で、時間にこだわることなく、やらされるのではなく自発的に仕事ができる。実は若い人たちを中心に、こんな働き方を本気で実践しようとしていた時代がかつてもありました。典型的なのは、2000年前後のITバブルの時代です。
若い創業者たちがあたらしい発想で企業を作り上げ、自由な働き方を実践しようとした。それを後押ししたのが、インターネットであり、ITベンチャーブームでした。ところが、うまくはいきませんでした。結局、投資家から集めたお金を使ってあたらしいチャレンジをするだけで、事業は軌道に乗らずにひとつの時代は終わってしまいました。
10年前は、私自身も上場したばかりのベンチャー企業の経営に携わっていました。もし当時、今行われているようなあたらしい働き方について耳にしていたとしたら、「何、夢のような話をしているのか。そんなものは単なる理想論だ」と感じたのではないかと思います。
本当の経営を知らない、学者や評論家が言い出しそうなことだ。経営をやったことがないのに、よくもこんな夢物語を、と憤慨していたかもしれません。実際、やろうとしてうまくいかなかった会社を見ていて、やはり無理だったか、と思っていたものでした。
ところが、あれから10年以上が過ぎて、環境は一変しました。インターネット技術が10年前からは想像もつかないほどに進化したおかげで、当時は実現できなかったようなビジネスモデルが、ITの活用が、今ではできるようになった。
経済環境も大きく変わりました。働く人たちの意識も変化しました。いろんな要素が組み合わさって、理想ともいえる働き方が本当にできるようになったのです。収益をきちんと上げながら、自由な働き方を実現させることができる時代になった。
その一方でここ数年は、今まで恵まれていた会社員が割を食う時代が来ていると感じています。とりわけ古い働き方をしている人たちです。
政権が代わり、日本の株価も上がっていますが、多くの会社がこの10年で過去最高益を出していたことは意外に知られていません。あのバブルの時代よりも、会社は儲かっていたのです。
ところが、社員の平均年収はどんどん下がっていました。結局、労働者の給料を下げて、利益を上げてきた、ということなのです。
つまり、働いている人にとっては、極めて不幸な環境になってきているということ。過去の働き方を続けている人は、搾取されるだけの時代が訪れている、と言っても過言ではないと思うのです。それは、マーケットを見ればわかります。投資家だけが儲かり、働いている人は取られてきたのです。
しかし、それに対して文句を言ったところで始まりません。文句を言わなくてもいい自分になるしかないのです。あたらしい力をつけ、自分で勝負できるようになっていけばいい。実際、かつてはなかったあたらしい環境のもとで、仕事をすることもできるようになっているのです。
もう、ただ辛い顔をして働くような時代ではない。自ら力をつけ、そんな環境から抜け出せる努力をこそ、するべき時代なのです。