「怖い!心臓がすごい速さで動くよ…」Apple Watchで“死病”を予防、スマートウォッチが命の恩人になる日Apple WatchのCM動画より

 日々脳卒中患者を目の当たりにし、心房細動の早期発見・治療がどれほど患者の人生を守るかを痛感している脳神経外科医ならではの視点だ。

「第二の理由は、心房細動は自覚症状が欠しく従来の方法では見逃されがちだからです。事実、7日間のホルターでも検出されなかった発作が、スマートウォッチを日常装着していたことで初めて検出された例も報告されています。精度そのものは医療機器の心電図に及ばないまでも、『常時モニタリングできる』という利点が精度ハンデを補って余りある成果を上げています」

 Apple WatchのCMはまさにこの事例なのではないだろうか。

「第三に、技術と制度の両面で現実的な実用段階に達しているのも注目の理由です。大規模臨床研究で有用性が示され、米国や日本でも医療機器として承認を受けています」

 以上の理由から、高尾氏は「心房細動の早期発見」機能に最も注目しているという。高齢化が進み、脳卒中対策が急務の日本においてこの機能は、医療とテクノロジーの融合が真に人びとの健康寿命を延ばす具体例になるのではないだろうか。

「機会があれば使ってみたい」
4割の医師が興味を示す

 では、医療現場におけるスマートウォッチのヘルスケア機能の活用は、どれくらい広がっているのだろうか。実はまだまだ限定的らしい。

「2025年に行われた調査では、デジタルヘルスに関心を持つ日本の医師400名中、実際にスマートウォッチの患者データを診療に利用した経験がある医師は約3割にとどまるものの、『機会があれば使ってみたい』という意向を示す医師が4割にものぼり、全体の7割が活用に前向きであることが分かりました」