米AIブームに潜む経済リスクPhoto:Bloomberg/gettyimages

 米国ではこの2週間、AI(人工知能)ブームを背景に、巨大テック企業による好調な決算発表が相次いだ。

 だが、少し詳しく見てみると、そうしたブームのより不安な側面が浮かび上がってくる。半導体やデータセンター、その他のAIインフラへの支出が、米企業の資金を流出させているのだ。

 これはAIブームに潜むリスクを浮き彫りにしている。AIが長期的に経済成長率と生産性を押し上げる可能性は誰もが認めている。しかし、そのブームを支える支出が企業と資本市場に重圧をもたらしている。

AIブームが経済成長を下支え

 2023年1-3月期以降、情報処理機器への投資はインフレ調整後で23%拡大したのに対し、米国内総生産(GDP)の伸びはわずか6%にとどまった。25年上半期のGDP成長率は1.2%と低調だったが、その伸びの大半は情報処理投資によるものだった。実質的にAI支出が米経済を下支えし、個人消費の停滞を補った。

 この投資の大部分を占めるのは画像処理半導体(GPU)やメモリーチップ、サーバー、ネットワーク機器で、いずれも、AIブームの中心にある大規模言語モデル(LLM)の学習と実行に必要なものだ。そして、これらの計算能力には建物や土地、発電設備が欠かせない。

 これにより巨大テック企業のビジネスモデルが変容している。

 投資家は長年、巨大テック企業が「アセットライト」であることを好んでいた。知的財産、ソフトウエア、「ネットワーク効果」を持つデジタルプラットフォームなどの無形資産で各社は利益を上げていたのだ。フェイスブック、グーグル、iPhone(アイフォーン)、ウィンドウズは、他のユーザーが使っているからという理由で多くのユーザーが利用している。売上高を増やすのに建物や設備をほとんど必要とせず、キャッシュを生み出す機械のような存在だった。