トランプ減税の恩恵、大企業に表れ始めたPhoto:Andrew Harnik/gettyimages

 今夏に米連邦税制改革に関する法律が成立したが、キャッシュフロー面での節税効果が米大手企業で明らかになり始めている。

 通信大手 AT&T はこのほど、「大きくて美しい法案」と呼ばれる歳出・減税法案の条項により、今年のキャッシュフローへの節税効果が15億~20億ドル(約2200億~2950億円)になるとの見通しを明らかにした。このレンジの上限は、同法成立前の時点での2025年のフリーキャッシュフロー(FCF)に関するアナリスト予想比で11%の増加に相当する。AT&Tは、26年と27年の節税効果額を年25億~30億ドルと見込む。

 要するに、資産の即時減価償却や研究開発(R&D)費の即時費用計上を認めるといった変更によって、米企業にはすぐに棚ぼたの利益がもたらされるだけでなく、追い風が長く続くことになる。これが徐々に株式市場を後押ししており、関税やその他の政策の不確実性から生じるリスクに対するカウンターウエートとなっている。

 キャッシュフロー面の節税効果は決算報告に影響しない。決算は税とは違った会計規則を使って計算されるからだ。節税効果のすべてが最終的にFCFになるわけでもない。AT&Tは節税効果の大半を新たな設備投資プロジェクトに再投資する方針だ。しかし、変更はそれでも、他のすべてが同じだと考えると、同社の株主やバリュエーションにとってプラスとなる。

 ザイオン・リサーチ・グループの創業者で、会計・税分野のアナリストを長年務めているデービッド・ザイオン氏は「会社のポケットに入る現金が増え、米政府のポケットに入る現金が減る。それは理論上、投資家にとって良いはずだ」と話した。

 AT&Tは2026年と27年のFCF見通しを10億ドルずつ引き上げ、それぞれ180億ドルと190億ドルとした。これは、債務削減や自社株買いなどのために利用可能な現金が増えることを意味する。FCFは通常、営業活動によるキャッシュフローから資本支出を差し引いたものと定義される。