
投資家にとって、企業の配当額は投資判断に直結する大きな指標だ。一方で、配当額は企業の資本政策にも左右されるため、必ずしも企業の“実力”通りに配当が実施されるとは限らない。では、その実力に即した配当額とはいかほどなのか。今回、さまざまな経営指標から、独自に各社の「理論配当額」を推計。実際の配当額との差をランキングにした。特集『5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…』の#22では、IT業界128社の理論配当額との乖離額ランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
IT業界で配当を多めに出している企業は?
“実力値”との乖離額を独自推計
投資家にとって、企業の配当額は投資判断に直結する大きな指標だ。ガバナンス改革などを背景に、株主還元を意識する企業が増えており、累進配当の導入や配当性向アップなどをアピールする事例も増加している。
一方で、配当額は企業の資本政策にも左右されるため、必ずしも企業の“実力”通りに配当が実施されるとは限らない。配当よりも成長投資を優先する企業や、内部留保の確保を重視する企業も存在するためだ。
では、それぞれの企業の配当額の“実力”とはどれくらいなのか。そこで今回、純利益やPBR(株価純資産倍率)といったさまざまな経営指標を基に、重回帰分析によって独自に各社の「理論配当額」を推計。実際の配当額がどれくらい上回っているのかを算出し、その乖離額をランキングにした。
この理論配当額は、同じような企業規模や“スペック”の企業の水準を考慮した、ある意味「妥当な配当額」とも呼べるものだ。ランキングを見れば、単純な配当性向の比較だけでは分からない、企業のスペックに対して配当を多めに出しているといえる「本当の高配当企業」の存在がくっきりと浮かび上がる。
一方で、乖離額がマイナス、つまり理論値よりも配当額が低い「配当出し渋り企業」の存在も浮き彫りとなる。だが、それは裏を返せば「配当ポテンシャルの高い企業」と見ることもできる。企業の方針変更次第では、それだけ配当を増やす“余力”があると考えられるからだ。
では、理論配当額との差が大きい企業はどこなのか。今回は、システムインテグレーター(SIer)やソフトウエアなど、IT業界128社のランキングをお届けする。
デジタルトランスフォーメーションの浸透を背景に、好業績が続くのがIT業界。特に大手のSIerでは、基幹システムの更新需要などもあり、各社好調な業績をたたき出している。
また、内需型の産業であるため、トランプ関税による悪影響も軽微とされており、株式市場でも注目されているセクターだ。
好調な業績を背景に、配当を積み増す企業も多いが、実際のところ実力値よりも高い配当を行っているのは一体どこなのか。野村総合研究所、大塚商会、トレンドマイクロ、SCSK、TIS、日鉄ソリューションズ、日本オラクル、BIPROGY、電通総研、インターネットイニシアティブ、オービック、三菱総合研究所、フューチャー、GMOペイメントゲートウェイ、KADOKAWA、ネクソン、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、グリーホールディングス、LINEヤフー、メルカリ……各社の順位と理論配当額を一覧で確認していこう。
また、ランキングでは、アナリスト予想を基にした3期後の配当性向も掲載している。これを見れば、配当がどの方向で推移しそうかもチェック可能だ。次ページで、ランキングの詳細を公開する。