AIが「使えるかどうか」は、人間側の「使い方」で決まります。
そう語るのは、グーグル、マイクロソフト、NTTドコモ、富士通、KDDIなどを含む600社以上、のべ2万人以上に思考・発想の研修をしてきた石井力重氏だ。そのノウハウをAIで誰でも実践できる方法をまとめた書籍『AIを使って考えるための全技術』が発売。全680ページ、2700円のいわゆる“鈍器本”ながら、「めちゃくちゃ充実している!」「値段の100倍の価値はある」との声もあり話題になっている。思考・発想のベストセラー『考具』著者の加藤昌治氏も全面監修として協力し、「これを使えば誰でも“考える”ことの天才になれる」と太鼓判を押した同書から、AIの便利な使い方を紹介しよう。

企画の核を端的かつ的確に伝える「プレスリリース」
社内に対するプレゼン時に、多く受ける指摘があります。
「説明がダラダラと長くて、よくわからない」
これです。商品やサービスの魅力を伝える上で、前提として「簡潔である」ことが欠かせません。
その際に役立つのが、「プレスリリース」の考え方です。新しい商品やサービス、事業の開始時、それらの概要と魅力を1~2ページほどでまとめ、世に発表するために作成する資料です。基本的には報道機関に向けた資料であり、ニュースリリースとも言います。
報道機関の関係者は皆忙しいですから、商品やサービスの説明を長々と書いたところで伝わりませんし、読んでももらえません。アイデアの核を簡潔にまとめ、一目瞭然にして、伝達の速度を上げる。それがプレスリリースを作る意義であり、もたらす効果です。
プレスリリースを作る要領でアイデアや企画を簡潔にまとめると、社内での提案や共有もスムーズになります。分厚い企画書を読み込むのは骨が折れますが、リリースだったらほんの数分で読み終わるからです。細かいQ&Aはあるにしても、概要が一目で伝わり、大筋でGOなのかNGなのかは判断可能になります。
この簡潔さを求めて、社内用企画書のフォーマットをプレスリリース形式にしている外資系企業もあったり、新規事業立案のトレーニングや研修でアイデアをまとめる手法として使われていたりします。
アイデアをリリースの形にしてもらう技法「未来の報道発表」
大抵10~20ページぐらいはある企画書に対して、プレスリリースは1~2ページほどです。「それくらいなら簡単に書けそう」と思われがちですが、情報は「簡潔」にまとめる方がむしろ難しいもの。余分な情報を見極めてカットしないと収まりませんし、概要や強みを短く端的な言葉にまとめて書く必要があります。
ここで、AIを活用します。それが技法その33「未来の報道発表」です。AIにアイデアや企画の概要を理解させた上で、プレスリリース形式でまとめてもらいます。
こちらが、そのプロンプトです。
〈企画の詳細を記入〉
この企画が3年後にリリースされる運びになったときのプレスリリースを書いてください。サービス名、想定ユーザー像、ユーザーの生の声、担当者の意気込み、売上目標も記してください。
〈企画の詳細を記入〉
この企画が3年後にリリースされる運びになったときのプレスリリースを書いてください。ただし、ジャーナリズムの訓練を受けている人に向けた堅実なプレスリリースとしてください。なお上記のメモは企画チーム内部向けなので、表現や構成は適切に編集してください。
※より正式なプレスリリースを生成したい場合はプロンプト②を使ってください
AIはあまたのプレスリリースを読み込んでいますから、入力したアイデアに多少の曖昧さがあったとしても、チューニングするのはお手のもの。ベテランの広報担当者に依頼するようなイメージで気軽にお願いしてみてください。かなり高いレベルで“プレスリリースのベータ版”をすぐに作ってくれます。
アイデアを「要点」で俯瞰したいときにも
アイデアの要点をバシッとまとめたいとき、プレゼンや企画提出のための資料をまとめたいときなど、使い所は様々。あるいは、アイデアが複数あって検討が困難なとき、それぞれのアイデア候補に対して「未来の報道資料」を使って簡潔にまとめ、各提案の冒頭に要約として載せる使い方もあります。
技法「未来の報道発表」のプロンプトは、いわゆる広報部が作成する報道向けのプレスリリースと違って、あなたの「アイデア入りの企画」が持つ魅力を文章化するための指示内容にしてあります(ですので実際に社外向け、報道向けの資料として活用する際は、担当者との調整はしておいた方がいいでしょう)。
また、アイデアの可能性を検討する意味を含んで「3年後にリリース」と仮置きしていますが、ここは半年後、1年後など、適宜変更して使ってください。
技法その33「未来の報道発表」、ぜひ活用してみてください。
(本稿は、書籍『AIを使って考えるための全技術』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。この他にも書籍では、分析、発想、発展、具体化、検証、予測といった“頭を使う作業”にAIを活用する方法を多数紹介しています)