お笑いトリオ「パンサー」の向井慧 Photo:SANKEI
「命のビザ」で知られる
外交官の杉原千畝
「ずいりょう」高校という。名古屋市の中東部、瑞穂区の文教地帯にある愛知県立高校だ。旧制の愛知五中を前身としており、のびやかな校風だ。個性的な卒業生が巣立っている。
「命のビザ」で知られる外交官の杉原千畝(ちうね、1900~86年)が、愛知県立第五中学(通称愛知五中)の出身だ。ユダヤ人世界はじめ国際社会から高く評価されている人物だ。瑞陵高校の同窓生のみならず、名古屋市民の間でも敬愛されている。
第二次世界大戦中にリトアニアの領事館に領事代理として赴任していた杉原は、ナチス・ドイツの迫害により欧州各地から逃れてきたユダヤ系難民(この定説に対し最近の研究では、「ソ連・スターリンの迫害から逃れてきたポーランドのユダヤ系難民」との異論も出ている)たちに1940年、2139通の日本通過ビザ(通過査証)を発給、約6000人の避難民を救った。外務省本省からの訓令に反した独断だった。この「命のビザ」によって助けられた人々の数は、子孫を含めると25万人以上といわれている。
杉原は、旧制愛知五中から早稲田大予科―日露協会学校(のちのハルビン学院)に進学した。ロシア語に堪能になり、外務省にノンキャリアの書記生として入省した。
1986年に死去したのち、妻で歌人の杉原幸子(旧制香川県高等女学校・現高松高校卒)が90年代に『六千人の命のビザ』を著し、杉原の足跡が広く知られることになった。世界に居住するユダヤ人の間にも杉原の人道・博愛精神に基づく偉大な功績が認知されるようになった。イスラエル政府から「諸国民の中の正義の人」賞を受けた。瑞陵高校正門西側には2018年、愛知県により杉原千畝顕彰施設が設置された。
テレビ番組制作会社のプロデューサーで、杉原より80年ほど後輩の金沢知子は、『祖父はユダヤ人を救った』という長編ドキュメンタリー番組を企画・制作し24年9月、NHKスペシャルとして放送した。
瑞陵高校同窓会の東京支部である関東瑞陵会の会長・安島政実は、NPO法人「杉原千畝 命のビザ」(事務所=東京・赤坂)の副理事長をしている。







