2025年4月に5年ぶりに改定された、健康維持のために取るべき栄養素の量を定めた厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」で見直された項目の一つが、この食物繊維です。

 世界保健機関(WHO)は、成人に対して「少なくとも25g/1日の食物繊維摂取」を推奨しています。

 今回改定された食事摂取基準では、こうした研究結果や背景を基に、理想的な摂取量を「少なくとも1日25g」と設定し、これまでより1g引き上げられました。しかし、日本人の食物繊維の摂取量は理想よりかなり少ないのが現状です。

 2018年、2019年の厚生労働省による「国民健康・栄養調査」によると、18歳以上の成人の摂取量の中央値は、1日13.3gでした。そこで今回の基準では、実現可能な量として、成人男性では年齢ごとに20~22g以上、女性は17~18g以上を「目標量」に設定しています。

「発酵する」食物繊維とは?
味噌やキムチなどの「発酵食品」とは別

 では、読者の皆さんは食物繊維に「発酵するもの」と「発酵しないもの」があることをご存じでしょうか? 食物繊維の中には「発酵するタイプの食物繊維」が存在し、この発酵性食物繊維は腸内にいる細菌のエサになります。

 腸に関する研究が進む中で、腸内細菌が生み出す「腸内代謝物」がヒトの体にさまざまな効果をもたらすことが明らかになってきました。そして、その「腸内代謝物」を作り出す要となるのが発酵性食物繊維です。

「発酵」というワード聞くと、醤油、味噌、ヨーグルトやチーズやキムチなどの発酵食品を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、発酵性食物繊維はこうした体の外で作られる「発酵食品」とは全く別物です。

 発酵性食物繊維は、腸内に届いてから腸内細菌のエサとなり、腸内細菌に分解されることで短鎖脂肪酸などの有益な物質を作り出します。これは言わば、自分の腸内で「体内発酵」を起こしているということなのです。

 ここで重要なのが、食物繊維の中でも「発酵性食物繊維」を選んで摂取することです。全ての食物繊維が腸内細菌のエサになって、発酵(代謝)するわけではありません。これまで食物繊維は、水溶性か不溶性かで分類されていました。