ネット上の掲示板での犯行予告、ネットいじめ、脅迫動画のアップロード、飲酒写真の公開……。これらはすべて子ども(未成年)が起こした事件だ。このようなネットリテラシーが足りない子どもの事件は後を絶たないが、事件を未然に防ぐためにはどうすればよいのだろうか。社会情報学、社会心理学が専門で、子どもとインターネットの関係についても詳しいお茶の水女子大学大学院・坂元章教授に話を聞いた。

「冗談で書き込んだだけなのに……」補導に戸惑う子ども

――子どもがネット絡みの事件を起こして補導されたという話は珍しくありませんが、きっと子どもは冗談半分でやっている。そして、お巡りさんに話を聞かれて初めて、自分がやったことの意味を知るわけです。ここに、因果関係のバランスの悪さを感じるのですが、なぜそのような状態になってしまうのでしょうか?

坂元 章
お茶の水女子大学大学院
人間文化創成科学研究科 教授
専門は社会情報学、社会心理学、教育工学。特にメディアが人間の認知的、社会的発達に及ぼす影響や、教育などにおけるメディア利用の効果について研究。社会学博士。東京大学文学部大学院修了後、同文学部社会心理学研究室助手、1993年、お茶の水女子大学文教育学部心理学科助教授などを経て現職。日本シミュレーション&ゲーミング学会理事、日本デジタルゲーム学会副会長。日本パーソナリティ心理学会理事、特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構理事なども務める。

坂元章教授(以下、坂元教授) ネット犯罪の場合、現実社会と違って簡単に悪いことができてしまうことが大きい理由だと思います。たとえば、学校で友達にケガをさせることは、すぐに問題だとわかりますし、それなりの労力もかかる。でも、ふざけてネット掲示板で犯行予告するのは簡単だし、やったらどうなるかはよくわからない。子どもが指先ひとつでやったことで犯罪行為が成立してしまう、つまり現実社会よりも行動の敷居が低くなっている。

 もっといえば、結果は自分が見ている画面からは遠く離れたところで起きるので、子どもにとって結果がイメージしにくいのではないでしょうか。簡単にできてしまうことで深刻な事態を招くということ、「爆破します」とふざけて書いただけでも現実社会と同じように補導、もしくは逮捕されるのだということは、きちんと子どもに教えなくてはいけないと思います。

――最近、スマートフォンを上手に操作している子どもをよく見かけますが、ネットリテラシーが必ずしもあるわけではないのでしょうか。

坂元教授 ネットリテラシーを「使い方」と「情報モラル」の両面で考えたとき、ネットに絡んだ事件を起こす子どもは「使い方」はわかっていても「情報モラル」が欠如しているケースが多いように感じています。

 以前、大学の入試時に携帯電話(ガラケー)を使ったカンニング事件が発生し、大問題になりましたが、それも同じです。問題の受験生は試験監督がいる中、携帯電話で、長文の英語や複雑な数式を親指一本で、画面を見ずに入力したわけです。こんなこと、普通の人はなかなかできませんよね。

 そんなすごい技術は持っているのに、そういうことをしたらIPアドレス(ネットワーク上で端末を識別するために個々に割り振られた番号のこと)をたどられてどの携帯から発信したかわかってすぐ捕まるということには無頓着。要するに、情報モラルの水準とスキルの間に天地の差があるわけです。