以下が、書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』で紹介している解説と回答です。
 AIの回答は正しいのか、確認してみましょう。

「不可能」であることに気づけるか

 まず、問題文にあるとおり、本当に「この条件ではうまく分けられない」のかどうかを検証してみましょう。

 Aに2分の1=8.5頭
 Bに3分の1=5.6666…頭
 Cに9分の1=1.8888…頭

 たしかに、どの条件でもうまく割り切れません。
 そもそもこの条件、よく考えると、

 1/2 + 1/3 + 1/9 = 17/18

 となります。
 17頭の牛を18等分するわけですから、

 そもそも不可能な条件なのです。

友人がとった「ある行動」とは

 それなら、17を無理やり18等分できるようにすればいいのです。
 そのためには、どうするか。
 簡単です。1頭足して、18頭にすればいいのです。
 これが、友人がおこなったことです。

 A:全体(18頭)の2分の1 = 9頭
 B:全体(18頭)の3分の1 = 6頭
 C:全体(18頭)の9分の1 = 2頭

 それぞれの条件による分割が可能になりました。

「いやいや、数を変えていいなんて、そんなの反則だろ」と思うかもしれませんが、大丈夫です。
 上記の分配をおこなった結果は、

 9 + 6 + 2 = 17

 なので、「17頭を分けた」という事実は変わっていないのです。
 そして余った1頭(友人が足してくれた1頭)を友人に返せば、「条件どおり」かつ「誰も損をしない」分配が可能です。

<正解>

 友人は牛を1頭追加した

 ということで、AIの回答は正解でした。

この問題からの「学び」は?

 この「17頭の牛」の問題には、現実の問題解決や思考法に応用できる、以下の“論理的な学び”が詰まっています。

 ①:一見不可能な問題も、“枠組み”を変えると解決できる
 
17という数字のままだと、1/2・1/3・1/9では割り切れません。しかし「18頭にしてから割る」という一時的な発想の転換によって、完全に分配できます。
 ここには、「条件を満たせない」と思える問題も、前提や枠組みを少し変えることで突破口が見えるという学びが詰まっています。

 ②:“一時的な追加”や“仮の操作”は問題解決に役立つ
 友人が牛を「一時的に貸した」という行為は、まさに「仮定を置く」思考。数学や論理の問題でも、「仮にこうだったらどうなるか」と仮置き・仮定してみると、先に進めることがあります。
 これは、問題に行き詰まったときは、いったん外部から“仮の手”を加えるという柔軟な思考が有効であることを教えてくれます。

 ③:“足しすぎて、あとで引く”という逆算の発想
 18頭にしてから分配し、余った1頭を引く、というプロセスは「逆算」的な発想。ゴール(きれいに割り切る)を先に達成し、そこから余計なものを戻すという思考です。
 ここから、最終形から逆に考えることで、現在の問題を整理できるという学びが得られます。

 このように、「不可能に見える問題でも、見方や前提を変えることで解決の糸口が見える」という学びを、楽しみながら得られる問題でした。

※本記事の問題は書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から抜粋しています。同書ではこういった「考える力が高まる問題」を67問紹介しています。