遊郭経営者は死ぬまで辞められない
開沼 おばちゃん、女の子と同じくらい、「元・経営者の方のいま」が気になります。経営者を引退された方はどうするんですか?
杉坂 死ぬ、ですね、現役引退の場合のほとんどが。自分の店だったら、所有権を持っていれば誰かに貸せますからいいですけど、賃貸でやってる人は一生続けるしかないでしょう。若い子なんかは見切りをつけて辞める子もいます。でも、年いったら次の仕事ないでしょうから。若い子だと辞めてからスカウトに転身している子が多いですよ。
女の子もいなくて、探す気力もないという方は廃業して、まあたぶん元やってはった業界に戻りはるんでしょうね。それしか道がないと思いますね。辞めたときに「女の子いたら紹介しますね」と言って別れますが、そこから連絡を取ることはないですね。
開沼 親方は結婚されている方がほとんどですか?
杉坂 そうですね、ほとんど結婚していますね。40歳以上くらいの人は。亡くなるときは、奥さんがいて、病院に入ってと普通のパターンです。
開沼 ご自身が店をやっていたときに働いていた女性から連絡はありますか?
杉坂 メールはありますよ。辞めてからも「結婚しました」とか、メールで交流がある子はいますけどね。「俺の名前なんか載せてたら具合悪いやろ?」って言ったら、「大丈夫、女の子の名前にしているから」なんてね(笑)。「マスターからのメール来たらすぐ消すし」「そのほうがええ」って。
開沼 相談相手のような役割を果たされていると。
杉坂 ほかの店よりも距離だけは縮めとこうというスタンスはありました。それを生温いと批判する方もいると思いますが。30代の経営者さんは、なんだかんだ遊び感覚の付き合いというか、そんな感じでやってるんじゃないですかね。「店終わったらクラブ行こうや」とか聞きますし。
距離を詰める人は結構詰めるんですよ。それが原因で、「なんで前の店辞めたの?」と聞くと「セクハラです」とかもあります。でも、いまは怖いですよ、ネットに書かれますからね。「どこどこの店のマスターは講習とか言って…」と。昔は、自分の店に自分の女を置いたりする店もあったと聞きますけど、いまそんなんしたら1発で店がグシャグシャになりますからね。