売春島や歌舞伎町のように「見て見ぬふり」をされる現実に踏み込む、社会学者・開沼博。そして、大阪・飛田新地の元遊郭経営者であり、現在もスカウトマンとして活躍する杉坂圭介。『漂白される社会』(ダイヤモンド社)の刊行を記念して、「漂白」されつつある飛田の現在・未来をひも解く異色対談。
第3回では、早朝・深夜労働にさらされる遊郭経営者の実態、敏腕スカウトマンのテクニック、さらに、疲弊する地元商店街の現在が語られた。
「漂白」が進み、行き場を失う西成地区の未来とは——。対談は全4回。
全国的な取り締まりが進む風俗産業
開沼 これまでは、性風俗はもちろん、社会のグレーゾーンに生きる人たちは、完全に違法だったり、社会規範から逸脱するブラックゾーンに足を踏み入れないように、自分たちで引き締めを行い、問題にならないよう対応していた側面がありました。
ところが、近年進んでいる様々な規制強化には、そうした自主規制と治安維持を壊してしまう可能性もあります。ただ、私は、警察自身もそれをわかったうえでやっているのではないかとも思っています。
こうして生まれる矛盾、つまり、規制を強化すればするほど新たな課題が生まれて、その課題は以前よりも社会の中で不可視化されてしまう現実があります。杉坂さんは、この「漂白される社会」の落としどころはどこに向かうと思いますか?
杉坂 どうなるんでしょうかね。ちょうど花博をやるときに、大阪府はソープがなくなっちゃいましたからね。僕はちょっと種類が違うと思うんですけど、飛田のような「ちょんの間形式」では、川崎のガラス張りの個室でしたっけ?あれもたしか完全になくなりましたよね。
川崎の件を聞いていると、飛田は許可をもらっているから「赤線」だけど、川崎は許可がないから「青線」で、青線だから潰したと。それから、不法入国の外国人を使っていたとかね。京阪神では、唯一かんなみ新地だけが青線なんです。
開沼 外国人を入れることで、ややこしいことが増えるということですか?
杉坂 だと思いますよ。飛田は日本人だけを使っています。その意味では、在日の女の子はすごくグレーな状態です。「使っていい」と言う方と「使ってはダメ」と言う方がいて。僕がやっていた店にはいませんでしたけど、国籍が違うだけのことなんだからと、使っている店も結構ありますけどね。あと、経営者は在日でもオッケーなんですよ。
本来は、不法入国や、ビザの種類によっては就労規制がある人を働かせないために規制しているはずなんですよ、警察も。風営法も「外国人を使ってはいけない」という法律ではないんです。