実質賃金「ボーナス支給月もマイナス」で事態は悪化、日本は“イギリス病”に近づく!?6月はボーナス支給月なので、毎年、実質賃金の伸びがプラスになることが多い。しかし今年は6月でも実質賃金がマイナスの伸びで事態は悪化している(写真はイメージです) Photo:PIXTA

ボーナス支給月でも実質賃金下落
6月も6カ月連続で前月比減少

 8月6日に公表された6月の毎月勤労統計調査(速報)によると、従業員5人以上の実質賃金は、前年比1.3%の減となった。これで6カ月連続の前年比マイナスだ。

 現金給与総額は2.5%増で、42カ月連続のプラスの伸びだったが、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が3.8%上昇したためだ。

 6月はボーナス支給月なので、毎年、実質賃金の伸びがプラスになることが多い。昨年6月も実質賃金がプラスの伸びになった。

 しかし今年は6月でも実質賃金がマイナスの伸びだ。事態は悪化している。

 実質賃金の伸びがマイナスになるのは、インフレが昂進(こうしん)しているからだ。消費者物価指数は対前年比で3%を超える伸びが続く。

 日本銀行は、「デフレ脱却」を掲げて異次元緩和を始めた際は、物価が上がれば経済が活性化すると言っていた。いまも「物価と賃金の好循環」を唱えて賃上げを促している。

 だが賃金が上がっても、それが生産性の上昇を伴ったものでなければ、コストプッシュ・インフレのスパイラルにすぎない。

 日本は、生産性が高まらないままインフレと成長停滞に陥った1970年代の「イギリス病」にいよいよ近づいている状況だ。

 実質賃金引き上げを政策目標として掲げている石破政権は、この状況を放置することはできない。