トランプ関税で打撃でも日本は「高賃上げ継続」が必須な3つの理由Photo:PIXTA

相当な関税引き上げ、覚悟する必要
中小企業の賃上げはこれからが本番

 日本経済復活のマイルストーンとして注目される2025春闘は予想を上回る好スタートを切った。4月3日時点の連合集計の賃上げ率は5.42%と前年を上回り、賃上げの流れの定着を大いに期待させた。

 しかし、その矢先、トランプ米大統領が発表した「相互関税」は世界や日本経済への激震だった。

 すべての貿易相手国に一律10%の関税をかけるだけでなく、米国が抱える貿易赤字の大きさに応じて、中国や日本など約60カ国・地域にはおのおので異なる高率関税を上乗せした数字が示された。

 すでに鉄鋼・アルミや自動車には25%関税が発動されていたが、相互関税で日本はそれ以外の対米輸出品に対し24%という関税率が設定された。そのほか、関税引き上げの報復措置をした中国には145%という異常な高率関税が課せられ、米中間では貿易戦争の様相だ。

 主要国の株式市場が急落、米国でも株式、米国債、ドルの「トリプル安」の事態になり、上乗せ関税は発動から半日で90日間の措置の停止が発表されたものの、国際貿易や世界経済の不透明感は残ったままだ。

 トランプ大統領は、各国との見直し交渉を進め、直近では中国に対しても「ディール(取引)」によって相互関税率などの引き下げに応じる意向を表明しているが、正統派経済学の考え方を無視して貿易赤字は悪と断じるトランプ氏が相互関税を簡単に取り消すことは考えにくい。

 日本は見直し交渉を始めているが、米国の主張は誤解に基づくものや言いがかりに近いものが多く、日本が出せるカードはさほど多くはない。相当程度の関税引き上げは覚悟しておく必要があるだろう。

 当面、懸念されるのは、これからが本番となる中小企業の賃上げへの影響だ。トランプ関税による不透明感の強まりから賃上げの機運が一気にしぼむ恐れはある。

 だがそれでも高賃上げの継続は日本経済にとって合理的な理由がある。