25年春闘は高賃上げ見通しも、「人手不足下で実質賃金低迷」の看過できない深刻度Photo:PIXTA

2025年度の実質賃金の伸びは+0.4%程度
「メリハリ賃上げ」などの新たな課題

 2025年の春闘に向けた労使交渉の動きが本格化するが、人手不足の深刻化を受けて、製造業・サービス業ともに労働組合から高い賃上げ要求が相次いで発表されており、賃上げのモメンタムは強い。

 現時点の予測では、今春闘の賃上げ率は全体で5%程度となる可能性が高く、前年(5.1%)並みの高水準が継続するとみている(図表1)。中小企業も、連合が目指す「6%以上」の達成は難しく企業規模間の賃上げ格差は残るにしても、前年(4.45%)に近い4%台前半の賃上げ率が実現すると予測している。

 しかし、25年度の実質賃金は、高水準の賃上げ継続がプラス材料になる一方、食料品などの値上げが続くと見込まれることから、前年比プラス幅が+0.4%程度にとどまると考えられる。22年度以降の物価高による実質賃金の落ち込みを取り戻すには到底至らないだろう。

 人手不足が深刻化している中で、なぜ実質賃金がなかなか改善しないのか。

 物価高への対応に加えて人手不足が追加的な賃金の押し上げ要因になっているのであれば、物価以上に賃金が上がる、つまり実質賃金が上がるはず、と考えるのが自然だ。

 そうならない背景には、人手不足が深刻なサービス業などのデジタル投資が不十分で生産性が低迷しているほか、賃上げが若年層に偏り、40~50歳代の賃金上昇率が若年層対比で大幅に低い「メリハリ賃上げ」などがある。

「人手不足下での実質賃金低迷」は、供給と需要の両面から日本経済の成長を下押しする。放置はできない問題だ。