一度手にすると愛着が湧く「保有効果」
お客様は、自分がすでに所有しているモノに対して、客観的な価値以上に高い価値を感じる傾向があります。これを「保有効果」と呼びます。
まだ購入していなくても、一時的に自分のものになったと感じるだけで、それを手放したくないという気持ちが芽生えるのです。
この心理を応用した最も分かりやすい例が「試着」です。
洋服をただ眺めているだけでは自分事として捉えにくいですが、一度袖を通し、鏡の前でその姿を見ることで「これは自分のものかもしれない」という意識が働き、購買意欲が格段に高まります。
「返品無料キャンペーン」の効果とは?
ネットショップにおいては、「返品無料キャンペーン」が非常に有効です。「もし気に入らなかったら返せばいい」という安心感で購入のハードルを下げ、お客様に商品を実際に手に取ってもらう機会を作ります。
そして一度自宅に届き、自分のものとして体験することで保有効果が働き、結果的に返品されにくくなるのです。
商品を「お試し」してもらう仕組みは、お客様の不安を取り除き、商品の価値を実感してもらう強力な手段となります。
「また来たい」の記憶を作る「ピーク・エンドの法則」
お客様がお店での体験を振り返る時、その記憶は全体の良し悪しで決まるわけではありません。
感情が最も高まった瞬間(ピーク)と、最後の場面(エンド)の印象によって、全体の記憶が決定されるという心理法則があります。これを「ピーク・エンドの法則」といいます。
例えば、レストランで料理がどれだけ美味しくても、最後のお会計時のスタッフの対応が悪ければ、「嫌な店だった」という記憶が残りかねません。
逆に、多少待たされたとしても、接客中にとても嬉しい一言があったり、帰り際に心のこもったお見送りをされたりすれば、「良い店だった」という印象が強く残ります。
開封する瞬間が最大の「エンド」
この法則は、お客様にファンになっていただく上で非常に重要です。
購入を決めた瞬間の「ピーク」で心からのお祝いを伝えたり、お会計や商品梱包といった「エンド」の場面で、丁寧な感謝の気持ちを表現したりする。特にECサイトでは、商品が届き、開封する瞬間が最大の「エンド」です。
美しい梱包や手書きのメッセージカードは、お客様にポジティブな記憶を残し、「このお店でまた買いたい」と思ってもらうための強力な仕掛けとなるのです。
選択肢が多すぎると選べない「決定回避の法則」
お客様のためを思って商品の種類を豊富に揃えた結果、逆にお客様を悩ませ、購入をやめさせてしまうことがあります。
選択肢が多すぎると、人は比較検討することに負担を感じ、最終的に「選ばない」という決断を下しやすくなるのです。これを「決定回避の法則」といいます。
例えば、ジャムの実験が有名です。24種類のジャムを並べた場合と、6種類に絞って並べた場合とでは、後者のほうが売上は格段に高くなりました。選択肢が少ないほうが、お客様は迷わずに購入できたのです。
「選ぶストレス」を軽減する
この法則から、私たちは商品のラインナップを戦略的に絞り込むことの重要性を学べます。
似たような商品をいくつも並べるのではなく、それぞれの特徴が際立つ商品に厳選する。そして「店長のおすすめ」や「初心者向けセット」のように、お客様が選びやすい道筋を示してあげることが大切です。
お客様の「選ぶストレス」を軽減してさしあげることも、売上向上につながる重要なおもててなしの一つなのです。
※本稿は、『「おウチ起業」で4畳半から7億円 ネットショップで「好き」を売ってお金を稼ぐ!』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。