あなたの会社にも「ルビコン川」はある…カエサルの決断に学ぶ、未来を切り拓く覚悟
【悩んだら歴史に相談せよ!】続々重版で好評を博した『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)の著者で、歴史に精通した経営コンサルタントが、今度は舞台を世界へと広げた。新刊『リーダーは世界史に学べ』(ダイヤモンド社)では、チャーチル、ナポレオン、ガンディー、孔明、ダ・ヴィンチなど、世界史に名を刻む35人の言葉を手がかりに、現代のビジネスリーダーが身につけるべき「決断力」「洞察力」「育成力」「人間力」「健康力」と5つの力を磨く方法を解説。監修は、世界史研究の第一人者である東京大学・羽田 正名誉教授。最新の「グローバル・ヒストリー」の視点を踏まえ、従来の枠にとらわれないリーダー像を提示する。どのエピソードも数分で読める構成ながら、「正論が通じない相手への対応法」「部下の才能を見抜き、育てる術」「孤立したときに持つべき覚悟」など、現場で直面する課題に直結する解決策が満載。まるで歴史上の偉人たちが直接語りかけてくるかのような実用性と説得力にあふれた“リーダーのための知恵の宝庫”だ。

共和政を揺るがした英雄、ユリウス・カエサル
英雄の凱旋、忍び寄る不和
ガリア全土を征服し、圧倒的な軍功と民衆の支持を得たカエサルは、凱旋式を経て、再び執政官の地位を目指してローマへの帰還を企図していました。
しかし、その動きを封じるように、元老院とポンペイウスは、ともに反カエサル派として結束し、決定的な圧力をかけてきます。
突きつけられた最後通牒
元老院は、「定められた日までに軍の統率権を放棄しなければ、カエサルを国家の公敵とみなす」と最終的に決議し、それを突きつけたのです。
この決議に従えば、カエサルは無防備な個人としてローマに戻るしかなく、執政官への道は閉ざされ、自らの命さえ危うくなることは明白でした。
運命のルビコン
この追い詰められた状況で、カエサルが下した決断は、まさに歴史を揺るがすものでした。彼は武力をもってローマの現体制に立ち向かう覚悟を決めたのです。
紀元前49年、カエサルは軍を率いてガリアから南下し、北イタリアにある小さな川――ルビコン川に到達します。
この川を越えることは、ローマ法においては「武装しての帰還」を禁じているため“禁忌”であり、事実上の宣戦布告を意味していました。
カエサルはその瞬間、「賽は投げられた(Alea iacta est)」と静かに言い放ち、ルビコン川を渡ります。このひと言は、もはや後戻りのない決断であることを世に示すものでした。
神速の進軍、崩れる抵抗
カエサルの進軍は、驚異的な速さを誇りました。イタリア半島を南下する彼の軍勢に対し、元老院やポンペイウスは有効な抵抗をほとんど示すことができません。やがてポンペイウスは、戦況の不利を悟り、ギリシャへと逃れます。
天才の軍略、雌雄決す
翌年、紀元前48年。ギリシャのファルサルスにて、ついに両者は決戦の火蓋を切ります。
結果は明白でした。カエサルは見事な軍略をもって圧勝し、ポンペイウスは壊滅的な敗北を喫します。
エジプトに消えた最後の希望
生き延びたポンペイウスは最後の望みをかけてエジプトに逃れ、プトレマイオス朝の支援を求めました。しかし、時代はすでにカエサルの手にありました。
エジプト王は、ローマで優勢となったカエサルに媚びるため、ポンペイウスを暗殺。その首はカエサルのもとに届けられます。
ローマの新たな支配者
こうして、ポンペイウスをはじめとする元老院勢力との戦いに勝利したカエサルは、ついにローマに戻り、「終身独裁官(ディクタトル)」の地位を手にします。
共和政の形を残しつつも、ローマは事実上、彼一人による支配へと移行していきます。
リーダーの覚悟を刻んだ言葉
「賽は投げられた」――その言葉とともに始まった決断の道は、リーダーが背負うべき責任と覚悟の象徴でもありました。