モチベーションの源は「家族」
家族のために出費も貯蓄もする

映画「風のマジム」 (c)2025 映画「風のマジム」  (c)原田マハ/講談社

『風のマジム』 9月12日(金)全国公開<9月5日(金)沖縄県先行公開>
南大東島のサトウキビでラム酒を作ろうと起業した女性の実話に基づく。まじむ(伊藤沙莉)は祖母(高畑淳子)と通うバーで、ラム酒の魅力に取り憑かれる。社内ベンチャーコンクールに応募し、家族、会社、島民、多くの人々の運命を巻き込んでいく。
原作:原田マハ 監督:芳賀薫 脚本:黒川麻衣 出演:伊藤沙莉/染谷将太/尚玄、シシド・カフカ、橋本一郎、小野寺ずる/滝藤賢一/富田靖子/高畑淳子ほか 製作・配給:コギトワークス 共同配給:S・D・P

 劇中、次第にギアを上げていくまじむを母が見守り、祖母が背中を押す姿が印象的。伊藤自身も仕事をする上で、家族が心の支柱になっている。

「私のモチベーションのベースにあるのはずっと家族。家族に褒められたいというのが、何をおいても一番で、子役の頃から変わりません。作品が決まったことを報告すると喜んでもらえるのですが、そこで一気にやる気スイッチが入ります。もちろん、お仕事自体が好きですし、台本を読ませていただくと『面白そう!』とワクワクしますが、家族が楽しみにしてくれている様子を見ると、やる気が倍増します」

 お金も家族が喜ぶことに使いたい。

「母や叔母に“恩返し”と言っていいのかわかりませんが、何か私にできることはあるだろうかと考えて、たまに頭がいっぱいになってしまう時があるんです。母が私を産んだのが30歳。そう考えると、いろんなことを我慢したのだろうなと感じます。もっとおしゃれしたかったかもしれませんし、美容もやりたかったかもしれません。でも、私たち兄弟3人に必要な物を買ったり、経験を与えたりすることに必死だったはず。お金で買えることばかりではないですが、たまにはちょっと贅沢なお店でご飯を食べたり、旅行したりして、みんなとの時間を楽しんでもらいたい。安直ですが、子育てを頑張ってよかったなと、少しでも思ってもらいたいです」

 家族のためには迷わずお金を使うが、自分への出費は悩んでしまう。

「ネットショッピングでは、服をカートに入れては出して、みたいなことをずっとやっています」と意外な一面も。

「普段の買物では、自分の脳みそを二つ、置いている感覚です。天使と悪魔じゃないですが、『買っちゃえ!』っていう自分と、『いや、ここは1回、我慢した方がいいんじゃない?』っていう自分の葛藤があるんです(笑)。いざという時のために蓄えはあったほうがいいと思っているので、貯金はコツコツ続けています。もし家族に何かあった時には、しっかりケアしたいですしね」

 演じる役柄同様、彼女を動かしているものはやはり家族だった。朝ドラ「虎に翼」は、日本中が彼女を家族のように見守ったドラマ。そして、多くの人が彼女から愛や力をもらった。彼女自身も仕事への責任感が大きく備わった作品だったと振り返る。

「『虎に翼』を見た方から、元気になった、自分を肯定できるようになった、というようなメッセージをいただいて、身が引き締まる思いです。その半面、間接的にでもこういう形で人は繋がれるんだ、と発見でき、ものすごくうれしかったです。私の場合、好きなことをしていたらそうなっていたので、とんでもなく幸福だなって思っています」