2024年NHK連続テレビ小説「虎に翼」では、日本初の女性弁護士のひとりで、女性初の裁判所所長も務めた、三淵嘉子をモデルにした猪爪寅子役を演じ、日本中を元気にした伊藤沙莉。最新主演映画『風のマジム』は、南大東島のサトウキビを使ったラム酒作りに挑戦した女性の物語だ。お酒に対する純粋な興味と、沖縄でものづくりをしたい、という一心から突き進んでいく、伊波まじむを爽やかに演じている。(撮影:高野広美 取材・文:高山亜紀)
「リスペクトを持って演じれば大丈夫」
家族が支え合う様子は我が家と一緒
「最初に台本を読ませていただいた時には、一切の濁りがない、本当にまっすぐな温かいお話だな、という印象を持ちました。サクセスストーリーではありますが、主人公のまじむが、何か特別なものを持っているわけではないところが、すごくいいなと思いました。まじむはお酒が好きで、人との繋がりや真心を大切にしています。本来、それだけで人って動けるものなんだなって納得しましたし、なんて温かく背中を押してくれる作品なんだろう、とうれしくもなりました。事務所の社長もこの作品を本当に気に入っていて、情熱を込めて向き合っている姿を覚えていたので、意欲がより高まりました」

ヘアメイク:岡澤愛子 スタイリスト:吉田あかね 衣装ほか:シアートップス/pelleq、ワンピース/near.nippon、チョーカー/BLANC IRIS、リング/Rieuk
原作は、契約社員から社長になった女性の実話をもとに、原田マハが執筆した同名小説。「虎に翼」に続いて、実在の人物がモデルの役柄に挑むことになった。
「実在の方がいて原作もあるとなると、自分なりにやったことが、現実や誰かの想像とは異なってくる可能性があります。そう考えると、とても緊張しました。でも、きちんとリスペクトを持って演じれば大丈夫だろうと思い、本番では精一杯演じました」
まじむは那覇で豆腐店を営む祖母と母と3人暮らし。通信会社で契約社員として働く彼女は、漫然と過ぎていく日々に不安を感じていた。そんなある日、祖母と通うバーでラム酒の魅力に気づく。沖縄にはラム酒の原料となるサトウキビが豊富にあるのに、ラム酒は作られていなかった。そこで彼女は、社内ベンチャーコンクールに応募する。
「自分を支えてくれる家族にこそ認められたい、と奔走するまじむの気持ちは、私もよくわかります。末っ子だからか、もう31歳なのに、母や叔母は私をいまだに『あの小さかった沙莉が!』って3歳ぐらいに思っている節があって(笑)。舞台も観に来てくれますし、朝ドラの時も差し入れがてら撮影を見学してくれました。そういう時は、私が頑張っている姿を見てもらえる、いいチャンスです」