なぜ僕は、公園で声をかけてきた“謎のじいさん”の家について行ってしまったのか?
投資歴70年 資産24億円――【プロの儲かる知識を簡単インストール】人生、もう詰んだ……40歳、しがないサラリーマン。月1万5000円の小遣いを握りしめ、毎日通勤する日々だ。増えない給料、重くのしかかる住宅ローンと教育費。冷え切った家庭に、もはや自分の居場所はない。そんな人生のどん底の状況で拾った、1冊の古びた手帳。それが投資歴70年、資産24億円を築いた89歳現役トレーダー・シゲルさんとの奇跡的な出会いだった。お金、仕事、家庭……すべてに絶望した崖っぷちの男が“投資の神様”から授かった「世界一のお金と人生の授業」とは?“小説形式”だからスラスラ読めてドンドンわかる話題の書『89歳、現役トレーダー 大富豪シゲルさんの教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものをお送りする。答えはすべて、この物語にある。
写真:川瀬典子
なぜか、初対面のじいさんの家にいた
「ほら、これがネット取引や」
某日、午前8時。なぜか僕は、初対面のじいさんの家にいた。
なぜ、こんな展開になってしまったのか。ほんの数時間前まで、こんな展開を想像すらしていなかった。
立ち寄った公園で拾った手帳を、持ち主に返そうとしただけなのに――。
公園での奇妙な出会い
「君、株やってへんやろ」
公園で唐突にそう問われ、訳がわからないまま僕は「はい、やっていません」と返した。
「この手帳な、ワシの株の売買記録や。……君、株に興味あるか?」
憧れと恐怖が渦巻く「投資」の世界
少し間を置いて、僕は自分の中を探るように考えた。
興味がないわけじゃない。メディアでは「新NISA」「日経平均史上最高値」と賑わい、スマホの広告には「50万円から1億円!」「資産100億円の投資家の極意」なんて、怪しげだけど夢のあるコピーが並んでいる。
だけど、そういうのはまるで異世界の話みたいなものだ。僕にとって投資家という存在は、大谷翔平みたいなもの。すごいとは思っても、自分がその世界に立つ姿なんて想像すらできない。
親からも言われていた。「投資だけはやめなさい。お前はコツコツ働くほうが向いてるから」と。だから、「株をやろう」とは一度も真剣に思ったことがなかった。
それでも、毎日のように耳に入ってくる経済ニュースのなかで、どこか心の奥に「やったほうがいいのかな」というモヤモヤが残っていたのも、たしかだ。
営業スマイル、崩壊の音
「興味がないわけではないんです。ただ……少し怖いんです」
そう口にすると、じいさんは怪訝な顔をした。
「怖い? なんでや?」
「だって……自分のお金がなくなってしまうかもしれないじゃないですか」
「それはやり方が下手なだけや。株は面白いもんやで」
―平日の朝8時に、初対面の老人から“株の面白さ”を語られるとは思わなかった。
さすがに、この流れは面倒だ。ここは曲がりなりにも営業歴18年で培った“あしらい力”で切り抜けよう。脳と表情を「営業モード」に切り替える。
「えっ、株をやってらっしゃるんですか! すごいですね! いやぁ、やってみたい気持ちはあるんですが、なかなか僕なんかには難しそうで……」
自分を下げて、相手を立てる。年配客には、このスタイルが鉄板だ。あとは適当に話を合わせて、うまく切り上げよう。そう思った瞬間、老人はさらに意外な言葉を投げてきた。
「興味あるなら、見てみるか?」
「興味あるなら、株取引、見てみるか?」
「……は?」
さっき装着したばかりの営業スマイルが、音を立てて崩れ落ちる。
「朝9時から取引がはじまるんや。もし興味あるなら、うちに来て見てみたらええ。手帳拾ってくれたお礼もしたいしな」
――ちょっと待ってくれ。この流れ、完全におかしい。
「いやいや、そんな……初めて会った人の家にお邪魔するなんて、とんでもないです!」
「来たくないんか?」
「いや……そういう意味じゃなくて……」
「ほんなら、ついておいで」
抗えない、その引力
……はて、こんなに押しに弱かったっけ。結局断りきれず、じいさんの自宅へとついていくことになった。



