すると、Yさんは迷うことなく、「Oさんですか、いやー、誰よりも商品に詳しくて探求心とこだわりが強い人ですよ。あの職人魂のような仕事に対する姿勢は尊敬に値します。こないだも○○について教えてもらって……」とサラリと答えるのです。
Yさんは、Oさんの短所を知っているはずです。でも、長所も見つけて、Yさんの知識から学ぶなど、うまく取り入れようとしていました。なお、こうしたYさんの人柄に対して、上司や他の先輩も一目置いて高く評価していたことは言うまでもありません。
最近の若手は、「憧れの先輩なんていない」と嘆く人が多いのですが、ロールモデルや手本になる存在は、ひとりでなくていいのです。一方で、不平不満が多くつまらなそうに仕事をする先輩や上司がいたら「あんな風になりたくない!」と反面教師にすればいいのです。
夢や希望を周りに語ろう!
最後に、成長する若手は、とにかく自分の夢や希望をあきらめません。小売業に勤めるMさんの夢は海外で働くことでした。しかし、語学が堪能なわけではありません。ただ、誰よりも自社商品を愛していました。商談でも社内の打合せでも、あらゆる場面で自社商品の良いところ、この商品で自分の人生が大きく変わったことを楽しそうに熱く語っていたのです。
ある時、その熱量を粋に感じていた取引先の幹部が、Mさんの会社の社長に「御社のMさんはいいですね。うちにもあんな情熱がある社員がいてくれたら」と伝える機会がありました。こうしてMさんの評判は社長の耳に入ることになり、社長はMさんと直接話したいと昼食に誘いました。
Mさんは社長とのランチで、いつものように自社商品をどれだけ愛しているか、「英語圏のみなさんにこの商品を届けたい」と熱弁しました。それからすぐ、Mさんには海外駐在の辞令が出ることになります。
筆者が社長に話を聞いたところ、「英語は後からでも習得できるでしょう。けれど、仕事への熱意は習得させるものではない、自ら持っていないと。彼女を見て、自分の若いころを思い出したなあ」と教えてくれました。まさに、Mさんの想いが周囲を動かし、社長を動かし、念願の海外で働く夢を叶えたのです。
成長する若手の3つの共通項をまとめると下記のようになります。
・幼いプライドを捨ててフィードバックを受け止めること。
・憧れの先輩をつくって、「長所」を真似すること。
・夢や希望をあきらめず周りに語り続けること。
これまで多くの会社の組織変革に関わる中で、分かったことがあります。若手が成長する・しないに、学歴は全く関係ありません。前述の3つの共通項を実践し、自分の可能性をあきらめない人こそ、成長するのです。
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