「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。
この記事では、本書の内容に関するインタビューを掲載します。(構成:小川晶子)

時間は、量だけではなく「質」を意識せよ

――特に働く女性の多くが悩むことだと思うのですが、「家族との時間を大切にしたい」と「自分のキャリアアップに時間を注ぎたい、バリバリ働きたい」の両方を同時に叶えることはできるのでしょうか?

山口周氏(以下、山口):時間は誰にとっても24時間なので、何かに多く使えば、別の何かに使える時間が減るというゼロサムゲームになってしまうという感覚があると思います。

ただ、家族に関しては単に時間をかければいいっていうもんじゃないんですよね。重要なのは「質」です。

たとえば、一緒に家にいるけれども、それぞれがスマホを見ていてコミュニケーションを取っていない時間が何時間もあるのと、たとえ15分であっても楽しかったこと、悲しかったことを話すようなコミュニケーションの時間があるのとでは、子どもにとって後者のほうが豊かな時間であるはずです。

人生の目標が「仕事だけ」になっていないか?

山口:組織のパフォーマンス管理に使われる「バランス・スコア・カード」というフレームワークがあります。

ハーバード・ビジネス・スクールの教授だったロバート・カプランと、経営コンサルタントのデビッド・ノートンが提唱しました。経営では売上や利益にばかり目が行きがちですが、それでは行き詰まるというのが、彼らの問題意識でした。

売上や利益以外に、人材がどのくらい成長できたか、顧客の満足度がどのくらい上がったのかという視点を持ち、過去から未来の時間軸を加えて全部見て評価しましょうということなんです。

バランス・スコア・カード

バランス・スコア・カードの考え方は、人生の経営戦略においてもとても役立ちます。仕事のことばかりではなく、「自分にとって大事なもの」を棚卸しし、それぞれの関係性とトレードオフを整理したうえで目標を決めていくと良いでしょう。

BCG時代、パートナーの先輩とよく一緒に飲みに行っていたんですが、彼が夜11時とか12時にパソコンに向かってカタカタと何か打っているんですよ。何をしているかというと、「仕事」「家庭」「地域社会」「健康」「自分の成長」といった分野の今年の目標について、酒を飲みながら見直しているんです。

「仕事の目標はここまでできているけれど、子どもにこういう体験をさせるという目標はまだできていない」とかね。定期的に見直すようにしているわけです。

(※この記事は『人生の経営戦略』を元にした書き下ろしです。)