ガチャで特徴的なのは、途中で離脱をしようとする際の強烈な(精神的な)痛みです。

 これはネットオークションのような競争相手によるFoMO(編集部注/取り残されることへの恐怖。Fear of Missing Outの略)の仕掛けの代わりに、サンクコスト効果が働いているからと考えられます。

 サンクコスト効果とは、それまで支払った回収不能なコスト(サンクコスト)を諦められず、その後も不合理な行動や追加投資を続けてしまう認知バイアスで、「もったいないから元を取らなければ」という感情が働く結果と言えます。UFOキャッチャーも同じ心理を利用しています。

SNSで廃課金自虐をしている人は
本心では自己顕示欲を満たしている

 ガチャで希望の「当たり」が一発で引けるのは非常にレアなケースです。

 試しに1回だけやってみようと始めたが最後、もう1回引いてみたら当たるかも……という「報酬の予感」に抗うのは相当に困難で、そして最後は、結局当たるまでガチャを回してしまいます。

 ここで諦めたらそれまで課金したお金を失ってしまう……という損失回避の心理が、FoMO状態を引き起こし、冷静な判断を奪ってしまうのです。

 SNSを少し覗いてみると、ガチャで廃課金を公表しているユーザーを見つけるのはそう難しいことではなく、中には数十万、数百万円といった驚くような金額を費やしてる人も珍しくありません。こういった「廃課金」を自称している人というのは、自虐的ではあったりもしますが、どこか誇らしげな面も感じます。

 課金ガチャの恐ろしいところは、そのSNSとの親和性の高さです。

 排出率の低いレアな「当たり」はそれをいち早く所有するだけで「いいね」で溢れかえりますし、課金した金額はそのままある種の富の証明になります。

 廃課金ユーザーにとっては、私たちの「そんなにお金使ったの!?」という言葉は、そのまま承認欲求を満たす社会的な報酬となっているかのようです。