スマホのマルチタスクが
集中力を根こそぎ奪っていく
このひとつのことに集中する時間が極端に短くなる状態を「スイッチング」といいます。スイッチングを繰り返し行なっていると、注意力が散漫になり、集中力がどんどん短くなることが明らかになっています。
カナダのマイクロソフトが2015年に実施した調査では、カナダ人の成人のうち2割がわずか10秒しか集中できず、「金魚などと同レベルの集中力」と発表し、大きな話題となりました。
この表現には一部拡大解釈なども見られるようですが、複数のメディアを同時に利用したり、複数のタスクを同時に実行したりする「メディアマルチタスキング」は注意力に問題を生じやすいことが多くの研究から示されています。
いずれにせよ、デジタル技術全般が思考、記憶、注意、感情調整能力に影響を及ぼす可能性が懸念されており、デジタル社会においてヒトの集中力が衰えているというのは間違いないと言ってよさそうです。
また、インターネットをたくさん使っている子どもほど、言語能力の発達が小さく、広い範囲で脳の発達に悪影響が出ていることが判明しています。
新奇性のある刺激は、それそのものが報酬であり、小さくドーパミンを放出します。しかし通常であれば、私たちの前頭前野が司る認知機能がそこでぐっと抑制機能を発揮して、本来注力すべきことに集中できるはずです。
スマホ依存が加速する若者を
大人たちがうまく利用している
しかし、SNSの通知のような新奇性のある刺激を我慢できずにスイッチングを繰り返していくと、いつの間にか集中する力が失われ、目の前の小さな報酬を次から次へと追いかけ続けるドーパミンに支配されたゾンビのような姿が誕生してしまうというわけです。
倍速視聴の話に戻りますと、「倍速で見たコンテンツはほぼ記憶に残らず、倍速で見るくらいなら見ないで別のことをしたほうがましであり、要は時間の節約ではなく時間の無駄である」との主張もあります。