中身が同じでもブランド名で味が変わる?脳がコカ・コーラやレッドブルの“広告”に騙される理由写真はイメージです Photo:PIXTA

コーラのラベルを貼った瞬間「こっちのほうがおいしい」と感じてしまう。レッドブルの車に乗ると早く走れる――中身は同じでも、ブランドイメージや広告の力だけで私たちの脳は簡単に騙されてしまう。大手企業が仕掛ける巧妙な広告戦略は、われわれのどんなクセを突いているのか?※本稿は、川島隆太、岡田拓也、人見徹『欲しがる脳』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

レッドブルの「翼を授ける」が
普通の車を速く走らせた

 ニューロマーケティング(編集部注/アンケートやインタビューなどでは捉えきれない、消費者の潜在的なニーズを明らかにする手法。脳波や視線の動きなどから分析する)の端緒となったペプシvsコカ・コーラの研究からもわかるとおり、私たちは潜在意識のレベルからブランドに非常に強い影響を受けています。

 コカ・コーラのブランドを認識すると、味の主観評価が逆転してしまっていました(編集部注/2004年、ベイラー医科大学のマクルーア博士らの実験により、「記憶に蓄積されたポジティブなイメージ」に基づいて飲料が評価されていることが、脳の活動から証明された。ブランド名を伏せた状態では、コカ・コーラとペプシを同等の味と評価し、ブランド名を明かした状態だとコカ・コーラのほうがおいしいと評価を下した)。

 この研究チームは「文化的なブランド情報が1次の味覚体験を上書きし、選好を歪めた」と述べています。この効果は良く言えばブランド力、悪く言えばバイアスですが、マーケティングの狙い通りの結果とも言えます。

 このようにブランドは私たちに強い影響を与えていますが、この事例はおいしさの感じ方、つまり外からは見えない内面的な変化でした。では、ブランドがその人の外面的な行動まで変えてしまう……そんなことがありえるのでしょうか?