端から見れば常軌を逸しているように思える行動でも、そのコミュニティの中では当たり前のものになれば、誰も自分たちの行為に疑いを持たなくなり、やがてその行為の過激さを競うようになります。

 そしてコミュニティ外との意見の隔たりが強くなればなるほどに、「外のつまらない連中には俺たちの凄さが理解できないんだ!」と結束は強まり、ますます常軌を逸した行動が加速していきます。

廃課金者の脳内は
犯罪者と近いというデータも

 これは仲間同士が逸脱的な言動を互いに称賛・強化し合うことで非行がエスカレートしていく「逸脱性トレーニング」と呼ばれる仕組みで、少年犯罪研究で再現的に確認されているメカニズムです。

 スマホなどの課金行為は、その依存リスクを理解しての節度を守った利用が重要であると考えます。痛みの伴わないガチャボタンをポチポチと押すだけで、労なく「予測がつかない不規則な報酬」が得られ、当たりによる達成感が得られ、「いいね」による社会的報酬が得られる……まさにガチャのボタンは、押せばドーパミンが湧き出る報酬ボタンです。

 いまZ世代を中心とした若者たちの間ではタイパ(タイムパフォーマンス:時間対効果)という考え方は常識レベルと聞きます。

 YouTubeなどの倍速視聴は当たり前、オンライン授業や映画ですら倍速でないと見ていられないという言葉まで聞こえてくるほどで、世はまさに大タイパ時代といえます。

 若者たちが何を目指し、時間効率を追い続けているのかはわかりませんが、行き着く先は見えてきています。目先の報酬に注意を奪われ続ける、ドーパミンゾンビ化です。

 一方で「動画の倍速視聴は集中力が衰えているサイン」との考えがあります。その心は、倍速にしないと集中できないほど、注意力が散漫になっているということです。

 私たちの注意には、本能的なボトムアップ注意と、意識的に注意を向けるトップダウン注意があります。注意力散漫とは、本来集中すべきものに対する脳からのトップダウン制御がうまく働かず、周囲の刺激によるボトムアップ注意に振り回されている状態です。