タイパを追求した結果、すべてを無駄にしているというのは、なんとも皮肉な結果です。

『欲しがる脳』書影『欲しがる脳』(川島隆太、岡田拓也、人見徹、扶桑社)

 勘違いしていただきたくないのですが、タイムパフォーマンスを追求することが悪いと言っているわけではありません。

 タイパを追求するあまり、前頭前野を用いた「遅い思考」(編集部注/ヒトには「速い思考(システム1)と遅い思考(システム2)」の2つのシステムがある。速い思考は、ほとんどエネルギーなく使える直感的で高速なオートマチックシステム。遅い思考は、使うたびにエネルギーを要するけれど、論理的で慎重な判断を下せるマニュアルシステム。ノーベル賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマンが提唱した)を捨て、直感的な「速い思考」に依存することが、目先の報酬に囚われたドーパミンゾンビ化を促し、最新の依存型マーケティングに「ハマる」原因ではないかと、考えています。

 タイパ主義というのは、悪い言い方をすれば、本来かかる労力を手抜きして時間を短縮するというちょっとズル賢いテクニックの面もあります。

 極度のタイパ主義のズルい若者は、もっとズルい大人のカモにされて、依存型マーケティングが生み出すドーパミンゾンビに「ハメられて」いるというのは、言い過ぎでしょうか。