これは良くも悪くも日本経済の特性だと思いますが、護送船団方式で新しい技術の導入に制限をかけることが行政の基本になっています。護送船団方式ですから特に嫌うのは一社だけが革新的な技術を先駆けて導入することです。

 変化は基本的にゆっくりと、既存の企業の業績に大きな影響を及ぼさない形で進めるのが日本式です。遠隔医療にしても、処方薬の通販にしても、テレビ番組の動画配信にしても、ビットコインにしても、ライドシェアにしても、ドローンの実用化にしても、大病院、テレビ局、金融機関、タクシー業界などさまざまな既存企業に配慮します。本当にゆっくりとしか進化を進めない政策をとるのです。

 結果として他国が先進国になり、日本ではイノベーションが起きないという欠点があります。失われた30年というものは技術革新に対する日本政府のサボタージュの歴史でもあるのです。

 実は私が使用をはじめたわずかこの2年間でも、テスラ車は徐々に運転しにくくなっています。ソフトウェアをアップデートするたびに謎の規制が加わっているのです。

 先ほどテスラ車は高速道路での運転がうまいという話をしました。ただ長距離を運転する場合はスバルの方が楽です。私は地元の名古屋と東京を往復することが多いのですが、スバルのクルーズコントロールを使えば新東名で速度をいったん最高速度の120km/hに設定すればあとは流れにまかせて目的地まで運転してくれます。厚木から川崎までの東名高速道路で頻繁に起きる渋滞時についてはハンズオフ支援機能があるので、リラックスしていても前の車が進めばそれについていってくれます。

 ところがテスラの場合は違います。120km/hでオートクルーズを設定していても、数分おきにシステムから「ハンドルを動かしてください」と命令が入ります。要は手放し運転をしている疑いを晴らすように命令が入るのです。

 これが120km/hで運転しているときには結構怖くて、下手にハンドルを動かすと車があらぬ方向に飛んでいきそうになります。かといって少しだけハンドルを切ってみせてもシステムが検知しないと警告音が鳴って、最終的にオートクルーズが解除されてしまいます。そうなると次のPAまでは自力で運転して、そこで車を停めて一度電源を切らないと元には戻せません。

 渋滞時も同様です。常に目が前を向いていないと警告音が響き、前を向いて運転していないと判断されるとオートクルーズがオフになります。厚木から川崎までの渋滞時にこれが発動すると運転者としてはかなり悲惨で、のろのろとした渋滞の中、自力でテスラ車を運転し続けなければならなくなります。