このカメラだけで運転するというのは技術的にはいくつかの革新を前提にしています。たとえば他の自動車メーカーが開発するシステムでは高精度地図の情報が重要です。単なる道順だけでなく道路のカーブや傾き、交通規制の情報をデータとして処理しています。しかしテスラでは人間の目が行っているように高精度地図なしで運転できることを目指します。
これらの革新の中でも最も重要な視点が「ニューラルネットワーク」を採用した点です。これまでの自動運転技術はルールベースでアルゴリズムを設定したり、認識と操作を別々のアルゴリズムで分担したりといったアプローチを採っていました。それに対してテスラは認識に沿って操作するという人間と同じような動きをAIに学習させます。
この方式の利点は3つあります。ひとつは学習開始段階では後発でも、学習データの量がある閾値を超えるとAIは急速に運転がうまくなるという点です。ふたつめにテスラの場合、全世界で走る600万台のテスラ車両から16億キロを超える走行データを吸い上げられるので、実験車両を走行させる方式よりも早く学習スピードを上げられます。
そして3つ目の点は、テスラの設計思想であるSDV技術、つまり車のスマホ化です。いったんセルフドライビングの技術が完成すれば、それを以前販売した車にダウンロードさせることが技術的に可能なのです。その後付けの自動運転アプリをいくらで販売するかは別にして、その気になれば全世界600万台のテスラ車がある日、一斉に自動運転化することもありうる仕様なのです。
次は「トヨタ」に買い換える…
経済評論家がテスラをやめるワケ
ポイント3:日本での自動運転
さて、ここまでお話ししたことを前提にすると、今はまだ後発のテスラの完全自動運転車ですが、近い将来、ある日突然、日本で走っているテスラ車が同じようにアップグレードされて、自動運転化される日がやってくるのでしょうか?
私はこの点については悲観的です。