お金があるなしにかかわらず、まったく何もしないのは精神衛生上よろしくない面もありますから、アルバイトをするのはよく理解できます。

逆風にさらされながらも
的屋が今も生き残れる理由

 昨今では少子高齢化で子どもの数が急激に減っています。さらにコロナ禍中は外出の機会やイベントが減少し、その期間中の経営は相当に厳しいものでした。

 また今ではインターネット通販が充実していますし、祭りがあっても、少し歩けばコンビニエンスストアがあるので、一般の人はおそらくそこまで大量買いはしないでしょう。これらさまざまな面で、的屋には逆風の時代といえます。

 そんな中で努力している的屋は、これまでの屋台を中心としたモデルから脱皮し、キッチンカーを購入し各地を回っています。

「ネオ的屋」「的屋2.0」とでも呼ぶべきでしょうか。キッチンカーでのビジネスは初期費用を比較的低く抑えられます。

 また祭りやイベントに限らず、どの時期でも出店場所を確保することができるので、その点では自由度が高く、儲かる道をより広い視野で探すことが可能になるでしょう。

 その際、的屋稼業で手にした人脈をうまく使えば、手持ちのトラックや他の資材で新たに始められるビジネスのトレンドを、いち早くつかむことができるかもしれません。

3.11の節電ムーブによって
爆発的に流行ったかき氷

 期間限定と思われている具体的な商品として、かき氷があります。

 かき氷が注目され始めたのは、2011年でした。というのも、東日本大震災が生じ、日本全体で節電が要請されたのです。日本の電力会社は、宣伝広告費を使って「自社の電気を使わないでください」と逆マーケティングを実施しました。綱渡り状態だったとはいえ、日本全体でなんとかブラックアウトが起きなかったのは誰もがご存じの通りです。

 しかし、私が注目したのは、節電時代に売れた商品が「ミニ扇風機」「制汗剤」「かき氷」だった点です。

 いずれもエアコンを思い通りに使えない社会的要請が生んだヒットでした。かき氷というもっとも原始的な“体を冷やす手法”が注目されたのです。ひさびさにかき氷を食した人が増え、そのおいしさがあらためて認知されたことで、夏だけではなく冬にもかき氷を食す流れが生まれました。