消費税減税より重要な「給付付き税額控除」や所得税見直し、投機筋にスキを見せない政策をPhoto:PIXTA

参院選での「民意」は何か
単純化されたSNSの消費減税賛成論

 今回の参議院選挙では、自民党・公明党の与党が過半数割れになり、野党の多くは「消費税減税」を公約に掲げ議席を伸ばしたことから減税への「民意」が強まったといわれている。

 世論調査でも「一時的であっても減税すべき」と考える人が多数(朝日新聞59%、毎日新聞58%)となっている。与党の中からも、消費税減税を封印したことを敗因に挙げる政治家もいる。

 与党が多数を失ったため、野党が連携すれば、消費税減税が実現する可能性もある。選挙を通じて有権者の声を政策に反映させることが民主主義の基本だからだ。

 だが一方で、消費税減税という個別の政策については、本当にそれが「民意」なのだろうかという疑問も湧く。

 今回の選挙でもSNSの影響力の強まりがいわれているが、SNSの議論は極端になりがちで、消費税が一方的に生活苦や物価高の元凶と決めつけられる一方で、消費税の持つ税制上の意義や社会保障財源を失うことの問題点や課題はほとんど議論されなかった。

 減税による負担軽減という国民受けがいいように単純化された公約が、背後にある複雑な問題の議論を覆い隠したのだろう。

 だが債券市場では、選挙結果が出た週の23日には10年物国債金利が1.6%台まで急騰、17年ぶりの高水準になり、20年債や30年債の超長期債利回りも上昇基調だ。市場は今後の財政赤字拡大、税制規律のゆるみに警鐘を発しているようにも思える。

 政治が選挙の時に聞こえのいい公約を掲げるのはやむを得ない面はあるが、専門家の知見を十分聞き、国民にもメリット・デメリットや選択肢も含め改めて示すべきで、短期の物価高対策より新たなセーフティーネットとして給付付き税額控除の検討を行うことが重要だ。

 大向こう受けを狙った議論から、問題の本質を捉えた現実的な議論に切り替える時期だ。